朝鮮半島の軍事情勢といえば、もっぱら北朝鮮がテーマだった。核実験やミサイル発射、さらには日本人拉致問題もあり、関心が高いからだ。『韓国の国防政策「強軍化」を支える防衛産業と国防外交』(伊藤弘太郎著、勁草書房)は、逆に韓国に焦点を当てている。
軍備の増強をやめない北朝鮮に対抗するため韓国が独自に開発してきた兵器は、安価で性能が良かった。欧州やオーストラリアなどの海外によく売れ、外貨稼ぎにも役立った。防衛装備品の輸出量が、2008年からわずか10年で倍増していることからも、その人気ぶりが分かる。好調な売れ行きにも支えられ、韓国の防衛費は日本を抜いて世界9位にまで成長している。
筆者は、防衛産業の発展だけでなく、韓国が展開する「国防外交」にも注目している。ある国に戦闘機や戦車を輸出すると、メンテナンスを通じて韓国と関係が密接になり、友好関係が築ける。
一方日本は、平和憲法のもとで外国の軍事問題への関与がタブー視されてきた。2014年には防衛装備移転三原則が制定されたが、反対意見も多く、進んでいない。
著者は、「(日本)国内の防衛産業の活性化を図ろうとするならば、海外への輸出拡大は不可避」と指摘しているが、私は懸念を拭えなかった。
本書にも紹介されているが、アラブ首長国連邦(UAE)の国防力整備に協力する見返りとして韓国政府は、UAEの緊急時には、韓国軍が自動介入するという秘密条項を交わしていたという。兵器セールスのためとはいえ、他国の戦争に巻き込まれかねない。
さらに、ウクライナ戦争では、韓国製の砲弾が米国を迂回してウクライナ側に供給された、と報道されている。韓国は「死の商人」になっていないか。韓国の歩みから慎重に教訓を学ぶべきだ。
2024年03月28日
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