出版市場の停滞や書店の減少、図書館の図書購入費の削減が続き、これらが複合しながら本離れが進む。この現状を打開し、いかに読書人口を増やすか、昨年10月に書店・図書館などの関係者および有識者が集まり、話し合いの場が設置された。4月1日に「対話の場」のまとめが公表された。その概要は以下の通りである。
詳細は https://www.jpic.or.jp/topics/docs/f182a3155191ee900d0eb3171532639290b1f576.pdf を。
ベストセラー本の問題で
書店や出版関係者の間では、公共図書館がベストセラーを大量に貸す「複本問題」への不満に加え、地元書店からの優先仕入れの推奨、図書館と書店が共存できるルールづくりの検討が求められていた。
今回のまとめでは、図書館の新刊購入が書籍市場全体への売り上げに与える影響は小さいが、ベストセラー本の過度な複本購入は少なからず影響があるとした。
地元書店からの図書購入については、ほとんどの図書館が地元で購入している。その一方、図書貸し出し用に本を装備するコストの負担、また値引きを求める自治体がある。その結果、書店側が十分な利益が得られないケースもあり、改善の必要があるとの意見が出された。
「図書館本大賞」創設も
一方、図書館機能の評価として、入館者数や貸出冊数が重視されるあまり、ベストセラーの複本購入を促しているのであれば、多様な評価指標を取り入れるなどの対応も検討する必要がある。
そのうえで、図書館や書店の連携モデルとして、本の注文ができる端末を図書館に設置することや図書館で予約した本を書店で受け取れる仕組みを作るなど、本へのアクセス向上を図る工夫が求められる。
書店がない地域では、図書館が本を販売することも考えられる。さらに発注や在庫管理の簡便化を進め、未経験の若い人でも空き店舗に本屋を出せるような環境づくり、観光ホテルにライブラリーを設けるなど、書店以外でも気軽に本が閲覧・購入できるようにする案も出されている。
司書らの投票によりお薦めの本を表彰する「図書館本大賞」を創設するアイデアも出されている。読書文化の普及に向けて検討できる事例が数多く挙げられ、各地の優れた取り組みを共有する重要性も指摘され、今後の活発な討議が期待されている。
2024年04月05日
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