2024年04月07日
【JCJ神奈川講演会】防衛大学校の実態は いじめ事件で神奈川支部例会 閉鎖的な環境 悪質かつ幼稚=保坂義久
JCJ神奈川支部は2月23日、横浜市内で例会を開いた。テーマは防衛大学校いじめ事件と国賠請求訴訟。原告の代理人の田渕大輔弁護士=写真=が、裁判の経過と防衛大学校の実態について講演した。
神奈川県横須賀市にある防衛大学校は自衛隊の幹部を養成する国の機関で大学ではない。学生は国家公務員となり、手当てが支給される。授業料は免除で全寮制。入学後4年間、共同生活を送る。
防大の教育内容で特殊なものに「学生間指導」がある。上級生が下級生を指導するもので、将来の自衛隊幹部を育成するための教育・訓練として位置づけられている。
神奈川の国賠訴訟の原告は2013年に防衛大学校に入学した。上級生たちからいじめを受け過呼吸を発症して、学内の病院で適応障害と診断された。
進級してからも上級生によるいじめは続き、原告は次第に言葉を発することができなくなった。しかし、防大当局はなんら対応策を取らず、2017年に、原告は退校させられた。
田渕弁護士は、この事案のポイントとして3点を指摘した。一つ目はいじめが学校という閉鎖的な環境で行われたため、証拠の壁がある。二つ目は身体に受けた傷はわかりやすいが心の傷は理解されにくい。原告は心理的な傷から言葉を発することが困難になったが、目に見える傷は負っていない。心理的な傷はこれまでも裁判上で軽く見られるケースが多い。3つ目は防衛大学校で起こった点だ。訴えられたいじめ行為は悪質で、また幼稚でもある。防大の卒業生の多くは、自衛隊幹部になる。自衛隊は殺傷能力のある武器を保有した軍隊。有事の時は、防大を卒業した幹部自衛官が、一般の自衛官に危険な任務を命じることになる。その時に人の気持ちや人の尊厳を全く考えられない幹部に多くの自衛官の指揮を任せていいのか。自衛隊は今のあり方が問われる。
実際にはどのようないじめがあったのか。うどん2キロ分を完食させる「食いしばき」や仰向けにさせて腹部を踏みつける「腹ふみ」、学生間指導として、集団で罵倒する行為などがあったとしている。
裁判は国と加害者の上級生1人を訴えたもの。防大の教官は原告に対しての不適切な指導を認識していたことが明らかで、安全配慮義務違反があったと原告は主張している。
国家賠償法では公務員の職務遂行上の行為は個人として責任を負わないとされている。この上級生の責任が認められるかも争点の一つとなる。
原告が言葉を発せられないことから、裁判も異例の方法で進行した。田渕弁護士は、原告が法廷ではパソコンを使って懸命に証言していること、加害者の上級生が証言したときは、過呼吸を発症したと、原告の心の傷の深さを語った。
参加者は36人。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
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