2024年04月09日

【月刊マスコミ評・放送】NHK夜ドラ「つくたべ」にハマる=岩崎 貞明

  NHKの夜ドラ『作りたい女と食べたい女』シーズン2が2月末に終了した。原作マンガも読み、一昨年のシーズン1から入れ込んで視聴していた筆者としてはシーズン2への期待が大きかったが、結果としては予想以上の好番組だったと思う。

 料理が好きだが小食な野本さん(比嘉愛未)と、たくさん食べたい春日さん(西野恵未)の二人がたまたま出会い、仲良くなる話だが、グルメ番組かと思いきや、さまざまな社会的課題がドラマに盛り込まれている。女性が男性のために料理する、または女性はたくさん食べない、といった無意識の偏見や圧力にモヤモヤする感じを覚えるのがシーズン1だったが、シーズン2では、お互いの恋愛感情を自覚した二人が家探しをして、同性婚が認められていないことによる社会的な差別に直面するようすも描かれる。他人といっしょに食事することができない「会食恐怖症」の南雲さん(藤吉夏鈴)と、野本さんとSNSで知り合った矢子さん(ともさかりえ)も、ほぼ原作どおりのキャラクターとして登場する。
 演じている俳優陣がマンガのイメージにぴったりで、とくに春日さん役の西野恵未は、本業がミュージシャンでドラマ初出演だそうだが、朴訥で誠実そうな人柄が、まさに原作のキャラクターそのものの印象だった。

 原作にはないドラマオリジナルの存在は、野本さんの職場の同僚・佐山さん(森田望智)。ドラマでは彼女が野本さんの理解者の立場で、視聴者の気持ちを代弁するような役回りを演じていて好感が持てた。同性愛者ではない佐山さんが、同性婚が認められていない日本の現状に憤りを吐露するシーンなど、まさに「アライ(LGBTの支援者)」の重要性を社会に訴えている場面だったと思う。

 折しも、日本テレビ系のドラマ『セクシー田中さん』をめぐって、マンガ原作者とドラマ制作側との間で生じた問題で原作者が自死してしまうという、何ともやりきれない事件が起きたばかりで、原作と脚色の関係について考えさせられる事態となっている。この『つくたべ』は、そもそも扱っている題材が「性の多様性」のように極めてデリケートなテーマであることから、そのあたりは原作者や監修者などと制作陣が綿密にコミュニケーションを取っているようすがうかがえる。
 ゆざきさかおみ氏による原作マンガはまだ連載が続いている。ここはぜひ、ドラマの方も「シーズン3」の放送を期待したいところだ。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号

  
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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