広島支部は2月16日、教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま(教科書ネット・ひろしま)と連名で、広島市の松井一実市長に対し、新規採用職員や新任課長の研修で長年続けている「教育勅語」を引用した講話の中止を要請するとともに、教育勅語を評価する市長の見解をただす質問書を提出した。
この問題が新聞報道で明るみに出た昨年12月、支部はいち早く松井市長に抗議し、教育勅語の不使用を求める声明を発表、市長に届けた。その後、教科書ネットをはじめ、さまざまな市民団体や被爆者団体、広島弁護士会などのほか、多くの市民個人からも同様の抗議や使用中止を求める意見が市には寄せられた。
しかし、市長は今年1月の記者会見でも「私の考え方とかけ離れた議論になっている。どういったものかをちゃんと知ったうえで対処するという大切さを職員に分かってもらうために使っている」と抗議に反発。「教育勅語の英訳を読むと民主主義のすばらしいことが書かれている」などと言い、今後も研修で教育勅語の引用を続ける意向を示した。
このため支部は、教科書ネットが開示請求をして入手した2020年度から23年度までの新任課長研修での市長講話の録画で、教育勅語を引用した部分の発言を同ネットとともに検証。浮かび上がった疑問点などを踏まえ、改めて松井市長に「教育勅語は戦後、国会において排除、失効確認が決議され廃止となっている。また、その文言は現憲法の理念・原則とは相容れないもので、憲法尊重擁護義務を負う公務員たる市長が公務員の研修に用いることは明らかに誤りである」と指摘し、研修での教育勅語引用をやめるよう申し入れた。
併せて次の3点を質問し、文書による回答を求めた。
@引用した教育勅語のどこが民主主義なのか、具体的に説明をA教育勅語全文の結論となる言葉は「天壌無窮のわが帝位の繁栄を守り維持せよ」、つまり天皇のために命を捧げよと命じるものであり、部分的な引用では職員に誤った認識を与えるのでは?B教育勅語は英文が先にあり、それを日本文に、さらに漢文に訳したとする理解は事実誤認ではないか。
これに対して2月29日付であった回答は、ほとんどまともに答えないばかりか、市長名ではなく研修センター長名の回答になっていた。支部と教科書ネットは抗議と再質問を行い、引き続きこの問題に取り組んでいくことにしている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年3月25日号
2024年04月11日
この記事へのトラックバック