岸田首相は4月8日から首相として9年ぶりの国賓待遇で訪米し、バイデン大統領との日米首脳会談に臨んだ。議会の上下両院合同会議での演説、米国が招いたフィリピンのマルコス大統領を交え、初の日米比三国首脳会談を開くなど「日米グローバル・パートナーシップ」を「宣言」した。
米と連携し軍拡
岸田首相は就任とともに、安倍路線を継承を表明し、その政治手法まで故安倍氏にならい、「閣議決定」を多用。立法府である国会での多数をテコに「審議」の空洞化を進めながら米の対中包囲網戦略と連動する大軍拡路線へと走り出した。
具体的には22年暮れの「安保3文書」を契機に5年間で47兆円に達する防衛費を増強したほか軍需産業への助成や兵器輸出解禁など実現。23、24年度予算で推し進めてきた。
ロシアのウクライナ侵攻から2年。「岸田首相は数十年の平和主義を捨て、日本を軍事国家にしようとしている」と書いた米紙「タイム」(23年5月22日号)の記事は現実化している。
米議会で演説した岸田首相は「日本は第2次大戦の荒廃から立ち直った控えめな同盟国から、外に目を向け、強くコミットした同盟国へと変革してきた」と表明。「自由の存続を確かなものにするため、日本は米国と肩を組んで立ち上がっている」「米国は一人ではない。日本は米国とともにある」(You are not alone. We are with you. )などと強調した。
指揮統制の連携
岸田首相は「敵基地攻撃能力」の保有や、防衛費増強についてバイデン大統領に「報告」したが、重要で無視できないのは、自衛隊の「統合司令部」常設を決めた日本が、平時、有事に関わらず、作戦計画・運用や武器調達などでの自衛隊と在日米軍の「統合」を確認し、自衛隊と米軍の「指揮統制」の「連携」でも合意したこと。米国がアジア太平洋でことを起こすとき,半ば自動的に自衛隊も動く可能性が含まれる危険極まりない「約束」だ。
また、日米会談では、AI、量子、半導体、バイオテクノロジー、クリーンエネルギー、宇宙などの科学技術分野での「日米協力」も確認された。問題はこれら技術の「軍事利用」で、会談は日本政府が現行「特定秘密保護法」の拡大を狙う「経済安保秘密保護法案」の衆院通過を見据えてのものと言えよう。
各紙評価は二分
今回の岸田訪米と日米会談に各紙社説は、肯定的な「世界に広がった多面的な『協働』」(読売)、「抑止力向上の合意実践を首相の積極姿勢を評価する」(産経)、「世界の安定へ重責増す日米同盟」(日経)の3社と、「日米の軍事協力 衆議なき一体化の促進」(東京)、「日米首脳会談 説明なき一体化の加速」(朝日)など国会の議論がほとんどないままの方針転換に懸念を示す社とに2分。日米「同盟変容」、「外交戦略」が問われていると各社社説の多くが疑問を呈していた。
新自由主義路線を徹底し、日本の平和主義と日本社会全体を問題にしてきた米からは、2000年ころから日本の防衛政策への注文がアーミテージ(元国防副長官)報告などで伝えられてきた。今回も4日に第6次報告が出されており、日米会談はその注文をなぞったものと言えよう。いずれにせよ、日本が国際社会でどう生きていくのか、憲法9条をどう生かしていくのか、まさに国民的な議論が求められている。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年4月25日号
2024年05月11日
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