脱炭素化の有力手段とされる「二酸化炭素貯蔵(CCS)事業法案」が今国会で成立した。マスコミは切り札と持ち上げるこのCCSは、今後10年間で官民合わせて4兆円を投資する。果たして本当に実現性があるのか、掛け声倒れになる危険性はないのだろうか。
炭素回収貯蔵の略称である「CCS」は、製油所や火力発電所、工場などから排出される二酸化炭素(CO2)を分離・回収し、液化したものに圧力かけて地中や海底に埋め込む。これを実現するには地下1`より深く、貯留できる地層があり、上部にCO2が漏れ出すのを防ぐ地層があるなどを備えていることが条件とされる。
政府はすでに電力、鉄鋼、石油など大手企業が手掛けるCCS7事業を選定した。国内では北海道・苫小牧地域、東新潟地域、日本海側の東北地方・九州地方、首都圏の5カ所。安価にできると見込むマレー半島とオーストラリアなど大洋州への輸出も2件含む。CCS長期ロードマップ(22年版)では、事業を30年までに本格稼働させて、その後20年間は毎年600〜1200万dずつ貯蔵量を増やす計画だ。50年時点で年1・2億から2・4億dの貯蔵が目標。現在の排出量の1〜2割に相当する。
「CCSなくして脱炭素(カーボンニュートラル)なしと」経済産業省はうたうが、事業を危惧する声は少なくない。この問題に詳しい工学博士の松田智氏は昨年6月25日号本紙にこうコメントを寄せている。
「CO2の固定・貯蔵にはコストがかかるし、電力も消費するのでCO2排出がさらに増える。大口発生源の火力発電所で実現できていないのは、CCS方式を使うと発電単価の上昇が避けられないからです。CO2が洩れない石油・天然ガスの廃坑とか堅ろうな場所が必要です。CCSの実現化は極めて困難です。経産省の資料ではコストや埋め立て規模などは明記されていません」
絵に描いた餅になるかもしれないというのだ。巨額な税金の無駄遣いになり得る可能性がある。
この記事へのトラックバック