2024年08月01日

【月刊マスコミ評・放送】テレ朝HD株主総会に行ってみた=岩崎 貞明

 6月27日、株式会社テレビ朝日ホールディングス(HD)の株主総会が開催された。今回は市民団体「テレビ輝け!市民ネットワーク」が@政治的な圧力により公正報道が難しい場合には第三者委員会設置・調査・公表する旨定款に定めることA社内の放送番組審議会で是正困難な報道につき第三者委員会調査を定款に定めること⓷放送番組審議会の委員の任期の是正(長期に及ぶ就任者があることに鑑み)C社外取締役として前川喜平氏を推薦する――の四項目を株主提案していた。

 2015年1月、『報道ステーション』で当時コメンテーターを務めていた古賀茂明氏の発言をめぐって政権幹部から介入と受け取れるメッセージが送られたこと、それを受けてテレビ朝日が古賀氏と担当プロデューサーを同年3月末で番組から降板させたことなどが疑われている。また、同局の放送番組審議会は長年にわたって幻冬舎社長の見城徹氏が委員長を務めており、幻冬舎が出版した書籍の広告と紛らわしい番組企画が情報番組で放送されたことなどが、株主提案の理由だ。

 午前10時に開会した株主総会は、早河洋・代表取締役会長が議長を務め、事業報告や会社提案の議案の説明などを行った。市民ネットワークの株主提案は第4号〜第7号の議案として提案されていたが、テレ朝HDの取締役会は株主提案すべてに「反対」の意見を表明していた。株主提案には田中優子・元法政大学学長が市民ネットワークの共同代表として説明に立ち、「これはテレビを応援するための提案です」などと述べていた。

 株主との質疑応答で、最初に質問に立った一般株主の男性が、前川喜平さんに対して誹謗中傷の発言を行った。会社に対して、前川さんを取締役に選任しない理由を問う質問だったが、前川さんが新宿・歌舞伎町の出会い系バーに通っていたことなど虚実を交えて揶揄する内容で、市民ネットワークの事務局を務める梓澤和幸弁護士が、前川さんの名誉棄損となる発言を漫然と放置した早河議長の議事進行責任を問い質したが、早河議長は「株主には発言の権利がある」などと退けた。しかし会場の一般株主からは、市民ネットワークの発言に拍手を送る人も少なくなかった。
 議案採決で、会社提案の議案はすべて可決、株主提案の議案は総会ではすべて否決という結果だった。市民ネットワークは来年も株主提案にチャレンジするという。
         JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年7月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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