(趣旨)2年前、凶弾に倒れた安倍晋三元⾸相は、メディア⽀配の欲望を隠そうとしない政治家だった。そのメディア操作は20年近く続き、現在の⽇本のジャーナリズムの腰抜け症状の主要な原因に挙げられている。
端緒は⼩泉政権の官房副⻑官時代の2001年に従軍慰安婦に関する⼥性国際戦犯法廷を取材したNHKの番組ETV2001「シリーズ 戦争をどう裁くか」について局幹部に「公平公正な番組に」と意⾒を述べ、忖度した幹部が慰安婦の証⾔など重要箇所を削除する改変を命じたこと。放送後、番組に協⼒した市⺠団体の提訴により最⾼裁まで争われたこの番組改変事件についてNHKは今も表向き「圧⼒による改変はなかった」としているが、実態としての政治介⼊や操作は続いている。
2012年末に再び安倍が政権を握ると2014年には朝⽇新聞社の「吉⽥調書」報道が⾎祭りにあげられた。政府事故調査委員会による福島第⼀原発の吉⽥昌郎所⻑の聴取結果書(吉⽥調書)の報道は隠されていた事故の真相を明かす特ダネ記事であったが、⾒出し⽂⾔の不適切を理由に他メディアからの攻撃を受け、朝⽇新聞社はこの報道を「記事取り消し」とし、社⻑が辞任、担当記者たちが処分された。不可解な事件の背後に、原発再稼働を⽬指す政権によるコントロールが働いていたと⾔われる。
2016年になると⺠間放送がターゲットとなる。2⽉に安倍に近い⾼市早苗総務⼤⾂が、衆院予算委員会で政治的公平を⽋く放送が繰り返された場合に、放送法4条違反として電波を停⽌するのかと質問され「将来にわたってあり得ないとは断⾔できない」と答弁。安倍政権に批判的な⺠放各局への恫喝と受け⽌められた。そして翌3⽉にTBS「NEWS23」の岸井アンカーやテレビ朝⽇「報道ステーション」の古舘キャスターが降板となり、スタッフが異動となった。
時間を経て繰り返された政治の介⼊がジャーナリズムの⾻格が弱い⽇本の組織ジャーナリズムに与えた影響は⼤きい。NHKの番組改変事件の時のデスクであった⻑井暁⽒の_______著書『NHKは誰のものか』の出版を機に、「吉⽥調書」報道を担って処分された元朝⽇新聞の宮崎知⼰⽒、⺠放の関係者が集い、それぞれが経験した政治圧⼒による現場⽡解の惨状を語る。
そこに脱出⼝はあるのか? 再⽣のチャンスはあるのか? それには何が必要なのか?
容易には答えの⾒えない問いに⽴ち向かう。
(⽇時)2024年9⽉14⽇(⼟)14:00〜17:30
(場所) 中央⼤学法学部茗荷⾕キャンパス2階 2E08教室 (丸の内線茗荷⾕駅徒歩3分)
(構成) 第1部 基調講演と報告、コメント
基調講演 ⻑井暁(元NHK プロデューサー)
報告 宮崎知⼰(元朝⽇新聞記者)
コメント ⼤森淳郎(『ラジオと戦争』著者、元NHKディレクター)
⾦平茂紀(TBSキャスター、⾼市停波発⾔に抗議)
第2部 ディスカッションと質疑
パネラー ⻑井、宮崎、⼤森、⾦平、会場参加者
司会 七沢潔 (中央⼤学法学部客員教授、元NHKディレクター)
(主催)中央⼤学法学部ジャーナリズム研究会(代表:⾼橋徹教授)ほか
2024年08月18日
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