2024年08月20日

【24緑陰図書―私のおすすめ】学びたい 人間の根本の思いを伝える=高内小百合(新潟日報記者)

高内小百合の写真.jpg

 学びの欲求を満たすために、危険や困難が伴おうとも学校へ通う子どもたちがいる。『すごいね!みんなの通学路』(西村書店)は、世界各地のそんな子供たちの通学の様子を集めた写真絵本だ。
 子どもの権利条約がうたう世界の実現を目指して活動する「国際NGOプラン」のカナダ代表が文を書いている。
 落ちかけた橋やワイヤーを二本渡しただけの橋を恐る恐る進む子どもたち、断崖絶壁の細い道を歩く子どもたち‥‥。どの写真も雄弁だ。学びたいという人間の根本にある思いが伝わってくる。
 見ているうちに、今より少しでも地球を健全にして、次の世代に引き継がなくてはという気持ちになる。
 この本のシリーズには同じ著者による「マララさん こんにちは」(同)もある。少女たちのさまざまな表情がとらえられており、マララ・ユスフザイさんの国連ユース集会でのスピーチの一部が紹介されている。「知識という武器を持ちましょう」、貧困やテロに立ち向かうには「教育こそ、たった一つの解決策です」というメッセージをかみしめる。

 もう一冊、時折開くのが辺見じゅん『収容所から来た遺書』(文芸春秋)だ。シベリア抑留という想像を絶する困難な状況にあっても、人と未来を信じ続けた山本幡男さんの強さを思う。
 句会に関する描写も印象的だ。言葉には人を支える大きな力が備わっているのがよく分かる。
 山本さんの言葉には「事実を通じて真実を、現象を通じて本質(を)」「最後に勝つものは道義だ」などいつの時代にも通じる審理がある。
 この三冊に共通するのは「感じる」、つまりこころが強く動かされる要素が大きいという点だ。日ごろ論評などを多く読む必要に迫られている人にこそぜひお薦めしたい。
「すごいね、みんなの通学路」.jpg
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | おすすめ本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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