中台戦争勃発を見据えて南西諸島に自衛隊の基地が次々と建設される沖縄県。県民は戦争の足音がヒタヒタと近づいていることを肌で感じているだろう。東京に住んでいると、予想はつくけれど、感覚がつかめず、他人事に陥ってしまう。
しかし、最近ある出来事で自分の心は変化した。南鳥島に陸上自衛隊の地対艦ミサイル訓練用の射撃場が整備される。日本最東端のサンゴ礁でできた南鳥島は小笠原村の一部で本州から1800`b離れているとはいえ、れっきとした東京都の島だ。射程100`を超えるミサイル射撃場の整備は日本で初めて。住所が東京都という場所から再来年以降、ミサイルがバンバン海上に向かって発射される――おぞましい光景が目に浮かぶ。やはり戦争がこちらに向かってやってきているという感じを持ち都民である自分の心はざわついている。
南豊島には以前から関心を抱いていた。なぜか、この小さな島こそ日本で唯一と言っても過言ではない核のゴミの地層処分(地下深く埋める)の適地と話題になったからだ。
これを提案したのは静岡県清水市に施設を構える東海大学海洋研究所の平朝彦所長(地質学者)だ。県知事時代の川勝平太氏との対談(今年1月静岡県の総合情報誌「ふじのくに」に掲載)で、平所長はこう述べている。
「南鳥島は太平洋プレート(太平洋の海底の大部分を占める岩盤)上にある唯一の日本領土で、周囲6`bの国有地。最大の特徴は地質的な安定性です。地震、火山活動はまず起きない。これは確信を持って断言できます。なおかつ、住民がおらず漁業権など、いろいろな権利が設定されていない。地下へ数`bのボーリングをして、使用済み核燃料を処分するキャニスター(核のゴミの廃液をガラス原料で溶かし合わせたものが入ったステンレス容器)を入れて、セメントで封印することもできます。地球上で最高レベルの安定性があるので、壊れる不安はまずありません」「最適な核廃棄物処理方法だと信じて疑いません」
これに対して川勝知事は「国難を救える島」「モデルケースを日本が提供できれば、世界に誇れる提言にもなりますと」と平所長の研究を称えた。
現在、島には海上自衛隊と気象庁職員が常駐しているだけで、一般住民はいない。
実は平所長は、南鳥島は核のゴミの地層処分の最適地とローカル局の北海道放送(HBC)の取材で3年前に提言している。所管の経産省にもこの提言を伝えたが、返事はなかったそうだ。
地震大国・日本には10万年以上も核のゴミを封じ込める適地はないと言われているが、南鳥島が適地となるとその説は覆る。僕は平所長に取材を申し込んだが、残念ながら「南鳥島での地層処分をさらに研究したい」と断られた。
また島にはEV(電気自動車)に使われるレアメタルが豊富な鉱物が大量にあることが東京大学の調査で明らかになった。 ミサイル射撃場の整備により、核のゴミの最終処分地候補は幻の説に終わり、レアメタル商業化も風前の灯火になりそうだ。南鳥島は今の姿から一変するのは間違いない。
2024年08月21日
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