2024年09月18日

【オピニオン】「核の傘」強化 日本が確認=丸山 重威

  日米両政府は7月28日、東京で上川外相・ブリンケン国務長官、木原防衛相・オースティン国防長官による担当閣僚会議(2+2)を開き、自衛隊と米軍の指揮、統制の「連携強化」を確認した。今回は通常の「2+2」(日米安全保障協議委員会)と併せ、「核の傘」を具体化する「拡大抑止閣僚会議」も初めて開催。日本の有事に「核を含む米国の軍事力」で対抗することを確認した、とされる。
 岸田内閣が「戦後安保政策の大転換」を打ち出し「専守防衛」から「同盟による拡大抑止」に踏み切り、「非核三原則」も捨てて、「核抑止論」に立った「日米防衛協力指針(ガイドライン)」の具体化に進んだ形だ。戦後79年、改めて、「核抑止論」では平和は守れない。核廃絶を」の声を広げていかなければならない。

 核「先制不使用」反対は日本
 米国では、2016年、終焉が近づいたオバマ政権が、戦略見直しの討議の中で「核兵器先制不使用宣言」を計画、実施しようとした。ところがこれに反対したのが日本。計画は頓挫した。

東京新聞2021年4月6日付ワシントン金杉電は、当時の国務省の担当官の証言を次のように紹介している。
 「同盟国の一部の中でも特に日本が『宣言は同盟国を守る米国の決意について、中国に間違ったサインを送る』と懸念を示したと説明。『このことがオバマ大統領が当時、先制不使用政策の断念を決定した理由だった』と明らかにした。(トーマス・カントリーマン元国務次官補)
報道によると、この意見表明を契機に、日米韓の「拡大抑止協議」が始まったが、閣僚レベルの協議は今回が初めてで、結局、日本政府が米国に抱きつく形で認めさせた「核の傘」政策を、この際、閣僚レベルで再確認。「核廃絶」に傾く世界に「待った」を掛け、「核による平和」キャンペーンにしようとの米国の世界戦略にも沿った政策だ。

朝中露「警戒論」を展開
 今回、共同発表では、@北朝鮮による安定を損なう継続的な行動と核・弾道ミサイル計画の追求A中国の加速している透明性を欠いた核戦力の拡大B北朝鮮への軍事協力を含むロシアの軍備管理態勢と国際的な不拡散体制の毀損―をあげ、「同盟の抑止態勢を強化し、軍備管理、リスク低減及び不拡散を通じて、既存の及び新たな戦略的脅威を管理する必要性を再確認した」と、朝中露3国への「警戒論」を展開。日本の非核三原則にも触れず、巧妙に「核抑止論」に誘導している。

 岸田内閣は、昨年のサミットでは「核廃絶」ではなく「核抑止論」に立った宣言を主導したが、ことしの慰霊式でも、国連事務総長メッセージや平和宣言が、日本政府の「核廃絶」や「核兵器禁止条約」への行動を促しているのに背を向け、「核兵器保有国と非保有国の仲介をする」と言うだけ。国民的批判は高まっている。
    JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年8月25日号   
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | オピニオン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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