Eiga no Mura
末期がんで家での最期を希望した父親を、映画監督の息子が看取りから旅立ちまでを丹念に記録したドキュメンタリーである。
超高齢社会の日本で介護は大きな問題であり、特に動けない状態になった場合には家族にいろいろな負担が生じてくるが、現実に直面しないとどのような状況になるのか想像がつかない。
この映画は撮影者が家族であることから、自然体でありのままの姿を見ることが出来る。
母親は自分一人で介護を行うつもりであったようだが、精神的にも肉体的にも参って訪問医療や在宅介護を活用して自宅で看取ることになる。画面には診療医や訪問看護師、介護ヘルパーなど医療と介護に関わっている方たちの様子が映し出される。
こうした人たちのおかげで在宅での介護が成り立っていることがわかる。母親がヘルパーや看護師たちと関わることになって、表情も豊かになりゆとりが生じるのも感じとれる。父親は最期に近づくにつれて衰弱して痩せていくが、カメラは命の終わりを丁寧に追っていく。
亡くなった後の納棺や斎場の様子も捉えて、葬儀は海での散骨へとなるが、海洋葬のシーンはあまり見ることがないので興味深い。この作品は改めて自分や家族の看取り方についても考えるきっかけになりそうだ。看取りの方法はもちろん人それぞれなので、自分なりの「あなたのおみとり」を見つける必要がある。自宅での看取りを考えている人にとっては大変参考になる作品である。
ポレポレ東中野にて上映中ほか全国順次公開
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年9月25日号
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