ノンフィクション・ジャンルからチョイスした気になる本の紹介です(刊行順・販価は税別)。
◆川端美季『風呂と愛国─「清潔な国民」はいかに生まれたか』 NHK出版新書 10/10刊 980円
私たち日本人が「毎日風呂に入り、お湯に浸かるのは当たり前」という意識や習慣は、いったいどこからきたのか。「日本人は風呂好き」のルーツを、江戸時代の入浴習慣や「清潔な国民」を育てるため衛生指導、さらには国民道徳としての身体・精神の「潔白性」強調など、入浴を通して見えてくる「衛生と統治」のカラクリを、立命館大学准教授(専攻・公衆衛生史)の著者が日本の近代史を通して考察するユニークな新書。
◆日向咲嗣『「黒塗り公文書」の闇を暴く』朝日新書 10/11刊 900円
モリカケ、桜を見る会など、解明のための資料請求に、政府は「黒塗り公文書」を平気で出してきた。その悪習がいまや地方自治の現場でも行われるようになった。公文書が黒塗りで情報開示される事態が多発している。市民が開示を求めた情報を、どうして行政は黒塗りにするのか、なぜ許されるのか?黒塗りで隠された官民連携の実態に迫る! 著者は数々の地方自治体に情報開示請求を行い、公文書の闇に迫る活動を続けるジャーナリスト。
◆原武史『象徴天皇の実像─「昭和天皇拝謁記」を読む』岩波新書 10/21刊 960円
昭和天皇と側近たちとの詳細なやり取りを記録した「昭和天皇拝謁(はいえつ)記」。政局や社会情勢、戦争について饒舌に語る昭和天皇の等身大の姿が浮かび上がる。歴史上はじめて象徴天皇となった人物の言動は、どんな内容だったのか。私たちにとって「象徴」とは何なのか。日本政治思想史を専攻する著者が、新聞記者の現役時に昭和天皇の最晩年を取材、その後も昭和天皇について研究を重ね、その成果の上に論考する。
◆鈴木俊幸 『蔦屋重三郎』平凡社新書 10/21刊 1000円
来年のNHK大河ドラマ「べらぼう」の主人公─蔦屋重三郎とはどんな人物か。江戸吉原の人気ガイドブック『吉原細見』を独占出版し、続いて狂歌と浮世絵を合体させた豪華な狂歌絵本の刊行、山東京伝らによる戯作を出版、歌麿や写楽などを見出し、大成功をおさめた。この名プロヂューサー「蔦重」がもたらした文化的な影響を軸として、蔦屋重三郎という人物を浮き彫りにする書き下ろし。著者は中央大学文学部教授で近世文学・書籍文化史を専攻。
◆ニュースサイトハンター編『追跡・鹿児島県警 闇を暴け!』南方新社 10/25刊 1800円
今年6月、鹿児島県警は2件の内部告発を機に、県警本部長の隠蔽疑惑、内部告発者の逮捕、報道機関への強制捜査など、底なしの闇が暴かれた。本書の編者・ニュースサイトハンターは、福岡市を拠点に政治・行政に特化した記事を配信している。そこへ鹿児島県警は家宅捜索に入り、公益通報を単なる情報漏洩にすり替えようとした。この事態の詳細と鹿児島県警の闇を、徹底的に調べ告発する本書は、ジャーナリストはもちろん一般市民の必読書。
2024年10月07日
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