9人の候補者が揃い、まさに「メディアジャック」状況で進められている自民党総裁選は、大宣伝の中で候補全員が「改憲・軍拡」を主張、選挙を前に、自民党キャンペーンを揃い踏みした。
もともと、総裁選は自民党内でトップをどうするか、の場。従って、政策論争はないのが当たり前で、議論をすればするほど、結果として、党全体の宣伝になる。
だが、メディアに露出して宣伝はしたいが、都合が悪い質問には答えるなと、「国民不在」の対応を指示していた。
自民党の総裁選選管は9月4日、所属議員に対し、「各種報道機関、団体、インターネット調査等から」アンケートが寄せられる見込みだが、この種のアンケートは「投票行動に影響を与える可能性が極めて大きいことから公正・公平な運営を図るため、その対応について自粛する旨、決定いたしました」「ご理解とご協力を」と要請(9月23日「赤旗」)した。
しかし、そんな中でも候補たちの「改憲」「裏金隠疑惑抹消」などの姿勢は隠しようもなく、報じられている。
「憲法改正」にはそろって前向き
改憲問題は、岸田首相が8月7日自民党の憲法改正実現本部で「憲法改正国民投票をするなら自衛隊明記をするべきで、論点整理してほしい」と促した。9人はこれを受けて、揃って憲法改正を主張。記者会見やアンケートでは、9人全員が自民党の@9条への自衛隊明記A緊急事態条項B教育無償化C参院の合区解消―の改憲4項目に「賛成」を表明した。
総裁選に最初に出馬表明した小林鷹之氏は、憲法審査会で議論されている緊急事態・議員任期延長案にも触れ「緊急事態条項と9条への自衛隊明記は『喫緊の課題』。早期の発議に向けて最大限の熱量で取り組む」と表明。小泉進次郎氏は「国民投票は一日も早く実施したい。国防、防衛力強化、予算増額、これは大賛成」と述べた。石破茂氏は9条2項の削除論者だが、「議論を振り出しからしても仕方がない」。
高市早苗氏が改憲論者であることは知られているが、茂木氏が「3年以内に改正を実現」、加藤勝信氏も「緊急事態条項の整備が最優先」としたほか、河野太郎氏も「なるべく早く発議へ持って行きたい」、林芳正氏も「任期中の発議したい」とした。
企業・団体献金殆どが禁止反対
総裁選、最大の問題は「政治とカネ」。しかし、本質的「企業・団体献金禁止」ができるかどうかについても、賛否を明らかにしなかった石破氏以外の全ての候補が禁止には反対。裏金問題についても「再調査する」はゼロだった。
小林氏は「企業・団体は社会で重要な役割を持っており、個人が善、企業が悪という考え方は取らない」と企業・団体献金の肯定論を展開した。 また、統一協会との関わりを「再調査するか」と聞かれ、「調査する」候補はゼロだった。
総裁選で突然クローズアップされたのは、小泉氏が言い出した「残業時間既成を柔軟化、労働市場改革として解雇規制を見直す」。この財界に呼応した主張には、河野太郎氏が同調した。財界が求める政策では、「成長分野に思い切った投資をする」(石破氏)、「先端半導体、GXなど戦略分野への投資拡大を加速する」(茂木敏充氏)「安全性が確認された原発の再稼働、リプレース、新増設に取り組む」(小林氏)などが目立った。
「軍事同盟」の強化を強調
今回の総裁選では、自民党内でも議論があるはずの 「軍拡・軍事同盟強化」についての論議がないことも目立つ。
小泉氏は「中国、ロシア、北朝鮮といった『権威主義体制』に毅然と立ち向かうために、防衛力強化を加速する」「日米同盟をさらに協会、レベルアップしていく」。「安倍元首相の後継」を自任する高市氏も、「無人機、極超音速兵器など新たな戦争の態様にも対応できる国防体制を構築する」「非核3原則についても議論しなければいけない」。と非たりとも前のめりだ。
河野氏にいたっては、「中国等の抑止のため、日本も原子力潜水艦を配備して東シナ海から太平洋へ出るところをしっかり首根っこを押さえる戦略をとる議論をしていかなければならない」などと、「戦争」を意識したかのような発言まで飛び出している。
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こうしてみると、自民党の総裁選と言っても基本政策に何の変化もなくこれを加速する単なるキャンペーンの場だったことがよくわかる。
一方、立憲民主党の代表選挙は、自民党と重なり合う感じで行われた。しかし、ここではっきりしてほしかった」「自民党との対決」については曖昧なままだった。
野田佳彦、泉健太、枝野幸男、吉田晴美の4候補のうち、自民党との対決をはっきりさせたのは、結局、新人の吉田氏だけ。ここでも問題を残したが、新代表には、、野田氏が、代表選投票の結果、就任した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年9月25日号
2024年10月22日
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