2024年10月23日

【出版界の動き】「TikTok」がリアル本の出版・販売に乗り出す=出版部会

◆トーハン「HONYAL」サービスを開始
 このほどトーハンは、小型書店の開業をサポートする少額取次サービス「HONYAL(ホンヤル)」を開始し受付を始めた。本の流通フローを簡略化し、少額の取引先とも持続的に取引が可能となる。書籍販売への新規参入を促進し、無書店自治体を失くす流れを作る。
 取扱いは書籍の注文品のみ、返品は仕入額の15%まで、配送は週1回。想定月商は30万〜100万円で、連帯保証人や信認金は原則不要。初期在庫費用も分割払いの相談を受ける。
 トーハンの一般的な取引書店と同じで、3000社以上の国内出版社からの商品調達が可能になる。トーハン桶川センター(埼玉・桶川市)で注文に対応し、70万点500万冊から随時ピッキング、非在庫品は出版社に発注する。トーハンの全国配送網を活用し、全国エリアに対応。一般的な書店と同程度のマージン率になるという。

◆メディアドゥ中間決算、増収増益で推移
 メディアドゥの2024年3月〜8月までの累計売上高は510億5700万円(前年同期比10.0%増)、経常利益は10億3400万円(同10.3%増)。
 2月に獲得した新規商流が業績に寄与したほか、既存商流の売上成長により電子書籍流通事業の売上高が好調に推移。またIP・ソリューション事業の利益改善が進んだ戦略投資事業において営業赤字が縮小したことで、増収増益となった。
 ジャンル別成長率は、売上の8割強を占めるコミック(前年同期比13.7%増)が、大手書店を中心としたキャンペーン展開の拡大により、メディアドゥの成長をけん引した。書籍(前年同期比8.4%増)も3月以降、書店のキャンペーン実施や好調な作品の影響により前年比で安定的に成長した。

◆ノーベル文学賞に韓国人作家のハン・ガンさん、アジア出身女性で初の受賞
 彼女は『菜食主義者』で2016年にイギリスの文学賞「ブッカー国際賞」を受賞。日本では、韓国文学を中心に手掛けてきた出版社「クオン」が同作のほか『少年が来る』『そっと静かに』『引き出しに夕方をしまっておいた』を刊行。
 河出書房新社が『すべての、白いものたちの』、晶文社が『ギリシャ語の時間』、白水社が『別れを告げない』の邦訳版を出版している。注文が殺到しているが、現在すべて品切れ中で、重版の準備に入っている。

◆長くなる本のタイトル。ネット文化の波及で「埋もれない」工夫
 本の書名が長くなっている。2023年までの直近5年間に刊行された本の上位30冊は、タイトルが平均10.3字となり、1960年代と比べ2倍近くになる。ひらがなや熟語を使った簡潔な書名の文芸書から、本文の文章とみまがうような説明調の実用書・ビジネス書の長いタイトル本へと、売れ筋が変化している。
 とりわけ大量のウェブ情報が交錯し、ネット文化が浸透する中で、埋没を避けるには本のタイトルも、訴求力のある分かりやすい説明調の書名がベストセラーを占めるようになった。人生・お金など生き方に関する言葉も増加している。たとえば最近刊では、下記の1書は典型である。
 横道誠『なぜスナフキンは旅をし、ミイは他人を気にせず、ムーミン一家は水辺を好むのか』集英社 9/26刊

◆「TikTok」がリアル本の出版に乗り出す
 世界で10億人のユーザーがいる中国発祥の多国籍企業「TikTok」は、「#BookTok」の運営を通して、世界中から多くの動画閲覧者を集めている。米国ではそこからベストセラーも生まれている。その影響力は無視できない。
 「TikTok」の関連事業として発足した、デジタル本の出版社「8th Note Press」は、「Zando」という出版社と提携して、リアル書籍の販売を拡大していく計画だという。扱うジャンルはロマンス、ロマンチック、ヤングアダルト小説が中心。毎年10〜15冊の本をリリースする予定。
 すでにエージェント経由で契約をしている著者もいるらしく、契約では「TikTok」のインフルエンサーを使って、プロモーションを行うという。日本ではスターツ出版が「TikTok」を活用した出版の事例もあり、新しい印刷版レーベルが立ち上がるかもしれない。

◆いま子どもに人気のスターツ出版<野いちごジュニア文庫>
 若者の間で人気を集めているのが、スターツ出版(本社:東京都中央区)が刊行する<野いちごジュニア文庫>。5年間で売上高を3倍に伸ばした。もともとは2007年に立ち上げた「野いちご」という小説投稿サイトに始まる。
 会員登録をすれば誰でも無料で小説を読んだり書いたりすることができ、投稿された作品で人気の高いものは、本として刊行されるので注目が集まった。しかも子ども自身が買いたくなる本の出版を基本に運営されている。テーマの多くは「恋愛」だ。電子出版よりも紙媒体の方が人気は高い。装丁が可愛くコレクション目的で本棚に並べたくなる、そんな気持ちをかきたてるのも人気のひとつ。

◆出版労連が『早わかり教科書制度 教科書Q&A 』(改訂新版)発行
 すべての子どもたちが使う「教科書」。だが「検定」「採択」については、複雑でわかりにくい制度がたくさん。「教科書」の制度・問題点について、旧版を大幅増補改訂し、新たにデジタル教科書やQRコンテンツについても扱う。A5判28ページ。頒価:1部200円、送料:ゆうパック実費。
※申込先:出版労連 FAX03(3816)2980/メールsumi@syuppan.net
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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