◆KADOKAWAと子会社 下請け業者ヘ「買いたたき」か 公取委が勧告へ
公正取引委員会は、東証プライム上場の出版社「KADOKAWA」とその子会社「KADOKAWA LifeDesign」に対し、下請け業者へ「買いたたき」をしたとして、再発防止を求める勧告を出す。
両社は2023年1月、子会社が発行する生活雑誌「レタスクラブ」(月刊)の記事作成や写真撮影に際し、業務を委託する20以上の下請け業者、すなわち雑誌の制作に関わるライターやカメラマンなどに対し、2024年4月号に掲載する分から原稿料や撮影料を引き下げる通告を行った。
下請け業者の多くはフリーランスで、取引条件の変更に関して事前の協議はなく、契約の打ち切りで仕事を失う心配から受け入れざるを得なくなっていた。引き下げ率は最大で50〜60%に達したという。本来受け取れるはずの報酬総額は600万円を超えるとみられる。
公正取引委員会は、下請法による勧告案を提出し、会社側がどう対応をするか見極め、最終的な処分を決めるとしている。
フリーランスをめぐっては働く人を保護するため、この11月1日、業務を委託した企業などに対して、報酬の減額の禁止やハラスメント対策を義務づける「フリーランス取引適正化法」が施行され、公正取引委員会は対応を強化している。これを見越して、早めに「買いたたき」をしていたとしたら、その責任は重い。
「KADOKAWA」はホームページで、「公正取引委員会による調査を受けていることは事実であり、真摯に対応しております。今後、開示すべき事項が生じた場合は速やかにお知らせしてまいります」とするコメントを出した。
◆東洋経済新報社の社長“電撃退任”を巡る騒動
東洋経済新報社は10月30日、田北浩章社長の“電撃退任”を発表。社長に就いて僅か2年。12月23日の定時株主総会で退任(会長に就任予定)し、新しく山田徹也取締役が社長に昇格する。同社は1895年に創立し、石橋湛山が主幹を務めたことでも知られ、「週刊東洋経済」「会社四季報」などを発行する老舗の出版社。そこで何が起きていたのか。
さっそく「週刊文春」が急転直下の人事が決定した詳細と社員向けの第1回説明会での紛糾や混乱ぶりを報じた。続いて「週刊新潮」も追いかけて記事にしている。
東洋経済の取締役は5人。10月30日の取締役会で3人が社長退任を支持。まさに2年で社長を引きずり下ろすクーデターといわれる事態となった。2日後の11月1日の正午から行われた社員説明会でも、再度6日の説明会でも社員の納得は得られていないとの疑問がくすぶっている。
東洋経済新報社のホームページでは、「一部週刊誌での弊社取締役選任議案の報道について」と題し、「選任議案の内容についてさまざまな観点から議論を行い、取締役会議長である田北の議事進行のもと、取締役の山田徹也を次の代表取締役社長とする選任議案を議決しております」と説明し、「クーデター」という表現には強い違和感を持っていると表明している。
◆日本医学ジャーナリスト協会賞に出版2作品が選出
医療分野の優れた報道・出版を表彰する2024年度の「日本医学ジャーナリスト協会賞」が決まった。同賞は、医療の報道に携わる記者や学識者らで作るNPO法人日本医学ジャーナリスト協会が、2012年に創設した日本で唯一の顕彰である。
「水俣病と医学の責任」大賞に「<移植見送り問題>を巡る一連の報道」(読売新聞東京本社臓器受け入れ断念取対象材班)を選定。出版分野からは優秀賞として、高岡滋『水俣病と医学の責任―隠されてきたメチル水銀中毒症の真実』(大月書店)、鈴木雅人+松村和彦『認知症700万人時代―ともに生きる社会へ』(かもがわ出版)が選ばれた。
『水俣病と医学の責任』の著者・高岡滋さんは36年間、水俣病を臨床の第一線で診療し続けて来た医者。水俣病がメチル水銀中毒によるものであり、脳の神経細胞を溶解していくことが水俣病の病態に影響している事実を明らかにした。
また研究者が行政に組み込まれ、研究を放棄していく経緯を克明に記述している。水俣病に対する「歴代の不作為」を、綿密に証拠を集め医学的に立証している。
『認知症700万人時代』は、京都新聞に連載された記事を加筆して書籍化した。<認知症は病ではない>とのテーマを掲げ、認知症の妻の介護や自らの認知症の症状に向き合うリアルな姿を追う。ヘルパーや看護師、人と家族の声や経験から、誰もが安心して暮らせる社会への道筋を探る。
2024年11月12日
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