2024年11月27日
【24年度JCJ賞受賞者スピーチ】冤罪≠フ深層を追う連作 被害者取材が闇を暴く NHKディレクター・石原 大史さん= 廣瀬 功
NHKディレクター の石原大史(ひろし)で す。大川原化工機事件は 約2年半の取材で都合4 本を放送しました。最初 は2年前、11
月の「クローズアップ 現代」です。
この事件では普通の 日常を過ごしてきた市民 が突然犯罪者に仕立て上 げられ、逮捕、拘留され る過程で1人が命を失っ てしまった結果、検察が 起訴を取り消す異例の判 断で事件がなかったこと にされます。冤罪に巻き 込まれた人たちの物語を 克明に記録したいという のが私の最初の関心で、 「警察の闇」を暴くこと ではありませんでした。
私が大川原化工機を初 めて訪ねたのは起訴取り 消しから1年少し経って からでしたが、皆さんが マスコミに不信感を持っ ています。マスコミは、 「生物兵器製造に転用可 能な機械を中国に輸出し たとんでもない事件だ」 と、逮捕、起訴に至る過 程で事件を大きく報じる 一方、当初から犯罪性を 否認した会社の主張は取 り上げませんでした。そ の結果、(会社は)銀行、 企業取引停止、世間に白 い目で見られるなど社員 の皆さんは大変な目にあ いました。
「お前らは冤罪の片棒 を担いだんだろう」と、 話を伺う社員の皆さんか ら言われるほど、マスコ ミ自身が大きく深く関わ ってしまった事件である ことをまず感じました。
「クローズアップ現 代」を放送できたのは、 「これだけの事件をきち んと記録することは大切 だ」と何度も申し上げ、 会社の方々と何度もお会 いしてコミュニケーショ ンをとり続けた結果です。
そこから約1年をかけ てNHKスペシャル、E TV特集、さらに1年を 経てNHKスペシャルを 立て続けに作る過程では 最初取材できていなかっ た警察や関係者の証言、 内部資料などを多数入手 し、どんどん出しました。
その後の取材の進捗 は番組の通りですが、警 視庁の内部、警察庁、検 察、経産省、東京都と事 件の関係者は増え続け、 秘匿されていた情報の流 出が広がり続けています。
我々の番組はこの事 件のある程度の事実を明 らかにし、その一部は地 裁も会社側の損害賠償請 求訴訟の判決で認めまし た。しかし国や東京都は 控訴しています。まだま だ新事実が表に出ると考 えられ、引き続き取材を 続けます。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年10月25日号
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