元気が出る本です!読んでいると、よし、オレもいっちょやってみるか!という気分になってくるから不思議だ。本書は「おらって」(新潟地方の方言で「私たち」と いう意味)にちなみ<おらってにいがた市民エネルギー協議会>と名付けたグループの活動を、やわらかくそして面白く記述したもの。
著者は新潟国際情報大学教授であり、国際政治学の研究者。あの2011年の福島原発事故の衝撃(それを著者は「第二の敗戦」と呼ぶ)から、エネルギーの民主化と地域主権を深く考えるようになり、地域循環共生圏という思想に行き着く。
その考えを共有する人びとが集まり、やがて小水力発電への挑戦が始まる。そして「おらって発電所」は40カ所を超えるまでに拡大し、地域市民エネルギーとしては、例のない成功を収める。
だが著者たちは、そこで立ち止まらない。エネルギー問題も含め、すべては「せいじ」と結びついていることに気づき、政治改革こそが根底にあるのだと思考は膨らんでいく。コロナ禍での文明転換、平和の希求にまで考えは及ぶ。
こんな経過が易しく語られ、読むうちに、よしオレも頑張らなくっちゃ!となるのは必然だ。第5章「次世代とともに」に登場する若者たちが描く、希望に心が揺さぶられる。学問と運動がコラボした稀有な成功例といえる。
今回の総選挙で、新潟の4選挙区は全て自民党が敗北した。その背景には、こんな市民たちの熱っぽい精神のエネルギーがあったことを思い知らされる本である。(大月書店1800円)
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