2024年12月05日

【裁判】NHK職場パワハラ 裁判から見えてきたこと いい加減な会社調査= 原田 勤(元埼玉新聞記者)

 こんなパワハラが報道機関の中でまかり通っていいのだろうか。迷った末に会社に訴えたが証拠が曖昧なものは再調査もせずに打ち切られた。そこで裁判に訴えたら、会社調査のいい加減さがさらに見えてきた。

 私は、埼玉新聞記者を定年退職後にNHKニュースウェブの校閲作業に就き今年で10年になった。所属する会社はNHKグローバルメディアサービス。デジタルニュース部門の非正規労働者である。職場の上司の部長(元NHK社会部記者)から2022年の4月に暴力を受け、その10月に認知症呼ばわりされた。

 暴力事件とは、校閲作業の補足資料の会社側の伝達不足によって生じた誤認(漢字とひらがなの使い分け)をめぐりNHKの作業現場にやってきた部長が難癖をつけ私の手を勢いよく払いのけた暴力行為である。

暴言は深夜帰宅のタクシー券の記載ミスの報告の際に起こった。私の説明を聞こうともせず「認知だ、認知だ、あなたは何を言っているか分からない。受信料をいただいてやっている仕事で、そんな重要な仕事をそんな人間にやらせているのかということになる。始末書だ、始末書」と叫んだ。話にならず憮然として私は会社事務室を出た。
 私はその後、日放労に相談したがうまく取り上げてもらえず一人加盟の民放労連放送スタッフユニオンに加入。翌23年に会社に訴え、4月に会社と団交を行った。

 会社は調査の結果、本人は「認知発言」は認めたが、暴力事件については発生日時の「その時間に現場に行った記憶がないと言っている」として「けん責」処分にとどめた。再調査の要求には応じず、「打ち切る」と宣言した。
 このため私は23年9月に部長に損害賠償、会社には使用者責任、安全配慮義務違反があるとして東京地裁に提訴した。
 この12月12日には第9回裁判で争点整理に基づいた審理に入る。

 私の最大の目的は会社のパワハラ防止規程の全面改正である。現行では全く防止の役割を果たしていないことを身をもって体験したからだ。 
 団体交渉では部長が「認知発言」につてどう言っているのか尋ねたが、会社側は「原田さんの言い分とは異なるがプライバシーもあるので答えられない」の一点張りだった。
ところが部長は裁判で主張を次のように明らかにしたのである。
 「言い方は穏やかであった。原告が苦笑いするのみで(タクシー券の)誤用の原因がはっきりしなかったため、思わず『それでも気づかないって、認知じゃないですか』と言ってしまった」。さらに「発言が穏当であれば原告は受忍すべきだ」とまで反論してきた。
 会社の調査にも同様の主張をしたに違いない。事実は私への侮辱、罵倒であり全く異なる。しかしこの結果が「けん責」なのである。

 暴力事件ではデジタル職場に通じるドアの職員証の通過記録を求めた。NHKは放送センター館内の通過記録の保存は1か月と答えたとの反論であった。本館の東西南北の玄関で入館チェックした者をさらに厳しくチェックし記録を保存する意味はないと考えているようだ。これでセキュリティーは確保されるとの主張だ。しかし、その中で私自身が「事件」に遭遇しており、発生から会社が調査するまで1年を要しているのである。

 団交で私は「人権について最も鋭く問われなければならない報道機関で起こった、NHK自身の問題だ」と指摘。会社の代表は「おっしゃるとおりだが現状はパワハラに限らずセクハラとかいっぱい起きている。なくそうと考えているが追いつかないのが実態だ」とはからずも吐露した。だとすれば裁判を延ばすのではなく大改革に着手すべきである。
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       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年11月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 裁判 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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