自民党・立憲民主党の党首選に続く衆院議員選挙、さらには米国の大統領選挙でこの夏から秋まで日本メディアは選挙報道に明け暮れた。衆議院選挙では自公政権が過半数割れ、米大統領戦ではトランプ元大統領が大方の予想に反して圧倒的勝利を収めて帰り咲いた。
与党の過半数割れで日本の国会は従来のように閣議決定ですべて決まることはなくなるとの期待の声が高い。だが懸念もある。野党が全体的に保守側にシフトしており、主要野党の殆どが日米同盟を日本外交の基軸だと表明していることだ。メディアもそれが当然という風情で、安全保障問題、軍拡問題を争点として提起しなかった。
米大統領戦では両候補の非難合戦ばかりが目についた。難民問題や関税問題、「もしトラ」などに注目が集まったが重要問題が素通りされたような選挙戦であり報道であったように思う。
世界的に焦眉の問題はウクライナ戦争とガザからレバノンへと戦禍が拡大する中東問題だろう。この両者に米国は深く関わっているが大統領戦では、イスラエル支援を止めるよう求める若者たちの運動が拡がったものの、両陣営で政策を闘わせることはなかった模様だ。
そのため日本のメディアでも米国との関連はほとんど報道していない。見落としがあるかも知れないが唯一の例外が11月1日放送のBS-TBS「報道1930」である。
同番組は、米国がイススラエルに、この1年間で178億ドル(2.7億円超)の軍事支援をし、殺傷能力の高い武器の提供を続けてきたこと、それらの武器群が、多数の子ども、女性、市民を殺傷していることなどを明らかにしていた。和平努力の姿勢を見せながらジェノサイドの手助けを続けていることを、同番組としてもめずらしく明確に示したのである。
大統領選での大混乱、ジェノサイドを支援する米国、フェイクを厭わない大統領の2度目の選出。日本はこのような国と同盟を結びさらにそれを深化しようとしている。
ガザでのイスラエルの所業はかつて欧米諸国がアジア・アフリカ・ラテンアメリカで行ったことと同類であり、その所業を支援・支持する諸国も同じ国々である。これらの国々は未だにに植民地主義を克服してないことを暴露している。
「リベラルな国際秩序」は第二次世界大戦後、米国を盟主とし西側諸国が主導する民主主義・法治主義・人道主義などを旨とした国際的秩序を指す概念とされる。
国際法に違反してパレスチナの地に、イスラエルの国家建設を強行したのも、建国後のイスラエルが国際法違反を繰り返していることを黙認してきたのもこれらの国々である。
日本は、軍事同盟の強化に走るのではなく「リベラルな国際秩序」が掲げた理念を実質化する新たな国際秩序の確立に努力・貢献すべきではないろうか
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年11月25日号
2024年12月13日
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