ノンフィクション・ジャンルからチョイスした気になる本の紹介です(刊行順・販価は税別)
◆丹羽典生『ガラパゴスを歩いた男─朝枝利男の太平洋探検記』教育評論社 1/8刊 2400円
「ガラパゴスを歩いた男」.jpg 著者が訪れた博物館の収蔵庫には、朝枝利男という見知らぬ人物によって撮影されたガラパゴス諸島の写真が、たくさん収められていた。それだけでなく彼の日記、水彩画も保管されていた。それを基に「ガラパゴス探検の日本人のパイオニア」でありながら、ほぼ無名の人物である朝枝利男の生涯とガラパゴス諸島への探検などを軸に、彼の残した膨大な写真・スケッチを交えながら紹介する。
著者は国立民族学博物館グローバル現象研究部教授、専門は社会人類学、オセアニア地域研究。編著に『記憶と歴史の人類学』がある。
◆樋口英明『原発と司法─国の責任を認めない最高裁判決の罪』岩波ブックレット 1/9刊 630円
「原発と司法」.jpg 多くの日本人は、「原発問題は難しい」「原発は安全に作られている」と思っていませんか。元裁判官の著者も、かつてはそう思いこんでいたが、原発裁判を担当するようになって、認識が変わったという。決して原発問題は難しいものでもなく、また安全でもない、この事実に気づいたという。本書では刷り込まされてきた「先入観」を氷解させ、原発を巡る問題の本質に迫る。全国の主な脱原発訴訟・国賠訴訟一覧表付。
著者は1952年三重県生まれ。京都大学法学部卒業。1983年裁判官任官、大阪高裁、名古屋地裁、名古屋家裁部総括判事などを歴任。2017年定年退官。
◆山田昌弘『希望格差社会、それから─幸福に衰退する国の20年』東洋経済新報社 1/15刊 1500円
「希望格差社会」.jpg 「バーチャル世界」で格差を埋める人々が急増している。格差は広がるだけでなく、固定化し、経済的に行き詰まりをみせているにもかかわらず、様々な意識調査では、格差拡大の被害を最も受けているはずの若者の幸福度が上昇している。なぜか。「バーチャル世界」で満足を得る方法を見いだしているからだ。リアルな世界で格差が広がる中、格差を埋め、人々に幸せを供給するプラットホームとして機能している事象を解剖する。
著者は中央大学文学部教授。著書に『パラサイト・シングルの時代』(ちくま新書)、『少子社会日本』(岩波新書)、『新型格差社会』(朝日新書)など。
◆清水建宇『バルセロナで豆腐屋になった─定年後の「一身二生」奮闘記』 岩波新書 1/20刊 960円
「バルセロナで豆腐屋になった」.jpg 元朝日新聞の記者が定年後、バルセロナで豆腐店を開業した。修行の日々、異国での苦労、新しい出会いと交流、ヨーロッパから見えた日本の姿─ジャーナリストならではの洞察力で、「蛮勇」のカミさんと二人三脚の日々を綴った小気味よいエッセイ。一身にして二生を経る─人生後半の新たな挑戦をめざす全てのひとに贈る。
著者は1947年生まれ。神戸大学経営学部卒。1971年、朝日新聞社入社。東京社会部で警視庁,宮内庁などを担当。出版局へ異動し『週刊朝日』副編集長、『論座』編集長。テレビ朝日「ニュースステーション」でコメンテーター。2007年、論説委員を最後に定年退職。
◆高野秀行『酒を主食とする人々─エチオピアの科学的秘境を旅する』本の雑誌社1/20刊 1800円
「酒を主食とする人々」.jpg 本当にそんなことがありえるのか? 世界の辺境を旅する高野秀行も驚く。朝昼晩、毎日、一生、大人も子供も胎児も酒ばかり飲んで暮らす、仰天ワールド! 幻の酒飲み民族は実在した! すごい。すごすぎる。エチオピアのデラシャ人は科学の常識を遥かに超えたところに生きている。朝から晩まで酒しか飲んでいないのに体調はすこぶるいい! 実際に共に生活し行動する中で、観察・体験した驚くべき民族と社会のリアルな姿をレポートする。
著者はノンフィクション作家。1966年生まれ。著書に『謎の独立国家ソマリランド』『イラク水滸伝』など。
◆静岡新聞社編『青春を生きて─歩生(あゆみ)が夢見た卒業』静岡新聞社 1/23刊 1200円
「青春を生きて」.jpg 骨のがん「骨肉腫」によって、18歳の若さで亡くなった磐田市の女子高校生と家族が、医者や友人と共に歩んだ闘病の記録。中学・高校時代の苦痛と生きることへの願い、そして卒業を夢見て学校に通い続けた彼女の姿は、同級生や周囲の大人の心を突き動かした。病身の生徒の「学びの保障」についても考察する。歩生さんの日記や家族の手記も収める。
AYA世代(15歳から30歳代)で、がんと診断された若者たちの教育問題をテーマにした、同名の静岡新聞短期連載(2024年1月1日〜2024年3月27日付朝刊)を加筆・修正して書籍化した。静岡新聞社のブックレット創刊号。ぜひ読んでほしい。
2025年01月13日
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