米軍空母艦載機の陸上離発着訓練の移転を伴う自衛隊基地整備が進む鹿児島県西之表市の馬毛島に11月15日、住民訴訟原告や弁護団ら6人が23年1月の工事着工後、防衛省が頑なに阻んできた上陸を果たし、初の視察を試みた。同行したJCJ会員の丹原美穂さんや弁護団事務局長の塚本和也弁護士の報告から、馬毛島の現状の一端をお伝えする。
海には基地用の湾岸工事の巨大レーンを積んだ台船がずらり=撮影・丹原 美穂さん
「弁護団や住民、地元議員らが島に視察に訪れると防衛省の警戒船に阻まれ。『許可を取れ』と上陸を阻まれてきた」と丹原さん、塚本さんらは証言する。
実は「許可」不要
だが、実際には許可など必要なかった。今年2月、省庁ヒアリングでそれを追及された防衛省は「調整」と述べ、法的規制などないことを認めたのである。
今回の市民らの馬毛島初上陸という大きな一歩はこうして実現した。
塚本さんらは、来年1月12日の着工2年に合わせ、上陸と集会を計画。「国の暴走を監視するため多くの人に上陸していただきたい」と、呼びかけている。
警備員が島に上陸した視察団の工事関係施設の立ち入りを拒んだ=撮影・丹原 美穂さん
問いかけも無視
一行は午後1時、遊漁船で種子島の西之表港から馬毛島に向かい、唯一の入口、葉山港を視察して2時半ごろ上陸したが陸地の建設車両が作業する現場との境界には警備員がずらりと並び「ここからは私有地。入れない」と立ち入りを拒否した。
塚本弁護士が「ここは誰の土地」「あなた方は誰」と聞いても一切無視。「話せる人はいないのか」の問いも黙殺。一行をスマホで撮影する関係者もいた。
一方、港から見える海側では仮設桟橋の工事が進み、漁場には大きな輸送船が停泊。「巨大なクレーンを積んだ台船が連なる様子はコンビナートのようだった」と丹原さんは思ったという。
島の現状を話す視察団の浜田 純男さん=塚本 和也さん提供
「漁場は全滅だ」
立ち入れるのは漁業者や漁協が共同購入したわずかな「入会地」だけ。「あまどまり」など漁協名や「入会地」などと書かれた立札を背に港を説明した浜田純男さんは「漁場は全滅、すべて破壊されてしまっている」と嘆いた。
約40分の陸上視察を終えた一行は、防衛省の警戒船に追尾されながら船で島を一周し、緑が姿を消した島を後にした。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2024年12月25日号
2025年01月27日
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