2025年01月31日

【沖縄リポート】焦りと面子だけ「工事着手」=浦島悦子

 耳を疑った。昨年末御用納めの12月27日、林芳正官房長官が記者会見で「明日にも(大浦湾の)地盤改良工事に着手する」と述べたというのだ。

 ありえない話だった。一昨年末、大浦湾の軟弱地盤改良工事のための設計変更不承認を貫く玉城デニー知事に替わって国が代執行(承認)。年明けから大浦湾での工事を強行開始したものの、県民の強い反対はもちろん自然条件や海況の厳しさにも阻まれて工事は難航を極め、地盤改良工事の準備や前段である海上作業ヤードの設置や護岸造成も遅々として進んでいない。そもそも、地盤改良に必要な7万1千本もの砂杭に使う砂(沖縄の年間採取量の3年分とも言われる)の調達も全く目途が立っていない。とてもじゃないが本体の地盤改良工事に着手できる状況でないことは、現場を知る者にとっては明々白々だ。

 翌28日、国は「工事に着手した」と全国に向けて大々的に発表した。しかしながらその内実は、トレミー船と呼ばれる砂撒き船からわずか2時間、砂を投げ入れただけのパフォーマンスに過ぎなかった。砂杭を打つ前段の敷砂作業だが、わずかな砂を投げ入れても、正月休みの間に流されてなくなってしまうだろう。

 御用納めも終わった翌日に敢えて演出して見せたのは、1年前のこの日、鳴り物入りで行った代執行から1年経っても工事が進んでいないことへの焦りと面子でしかない。辺野古新基地建設を巡って繰り返されてきた年末の茶番劇には嗤うしかないが、同時に、どこまで県民を愚弄し、国民を騙すつもりかと怒りが収まらない。
2025初興し@.JPG

 2025年元旦、辺野古の浜に250人が集まって初興し(はちうくし。主催:ヘリ基地反対協)を行った=写真=。水平線を染めて昇る初日に平和を祈願し、今年も地道な陸・海の現場活動によってこの理不尽な基地計画を断念させることを誓った。
 1月9日付の『琉球新報』コラム「金口木舌」は、新基地の事業費の膨張と無駄遣いをギャンブル依存に譬え、「サンクコスト(埋没費用)」が「惜しければ撤退の機会だ」と忠告した。
         JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年1月25日号

posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 九州・沖縄 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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