2025年03月01日

【出版トピックス】コミック市場好調、フリーランス春闘宣言=出版部会

◆24年コミック市場7043億
 出版科学研究所の発表によると、標記の金額は電子コミックが牽引し、1・5%増と7年連続のプラス成長となった。内訳は、紙のコミックス1472億円(同8.6%減)、紙のコミック誌が449億円(同9.7%減)、この2部門を合わせた推定販売金額が1921億円(同8.8%減)となる。3年連続の大幅マイナス。
 一方、電子コミックは5122億円(同6.0%増)で、コミック市場での占有率は72.7%となる。コロナ禍前の19年からは、ほぼ倍増している。電子書店の積極的な広告出稿やキャンペーンが功を奏しているといわれる。映像化作品だけでなく、独占先行配信・ストアオリジナル作品などが牽引している。
 なお、同研究所による紙のコミック推定販売金額は取次ルートのみであり、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。また、電子コミックの市場推計は定額読み放題を含む「読者が支払った金額の推計」で、広告収入や電子図書館向けは含まれない。

◆遠隔複写サービス開始
 料金は、資料の種類や複写方法別に規定した「複写物の作成に要する費用」と、図書館等公衆送信補償金管理協会(SARLIB)ホームページで公開されている「図書館等公衆送信補償金規程」に規定された「著作権者に支払う補償金に相当する額」を合算したもの。
 SARLIBは1月22日、図書館等公衆送信サービスを実施する「特定図書館」の登録受付を開始。2月13日現在、国立国会図書館や大学図書館など約10館が登録されている。
 費用の見積もりが画面上に表示され、本体価格3200円の本を15ページPDFダウンロードで複写してもらうと、推定金額が2700〜3509円と出るそうです。郵送受取の額も同時に表示され、その場で郵送に切り替えることも可能。

◆講談社は減収減益
 売上高1710億3800万円(前年比0.6%減)。営業利益108億円(同24.6%減)、経常利益143億円(同16.3%減)、当期純利益93億7000万円(同17.9%減)。9年ぶりに減収減益に。
 マンガで累計4000万部の「ブルーロック」や「WIND BREAKER」など、映像化作品が好調だったものの、マンガ「東京卍リベンジャーズ」の好調が続いた前期に比べれば売上高が減ったほか、紙など原材料費や輸送費の負担に加え、グローバル戦略を見据えた海外への投資がかさんだ。
 役員人事では、金丸徳雄、古川公平、白石光行の3氏が退任。金丸氏は最高顧問、古川氏と白石氏が顧問に就いた。新任はなし。機構改編については、役員直轄業務改革部を社長室に移管した。

◆新聞発行部数減少続く
 新聞のABC部数(2024年12月度)が明らかになった。各社とも部数減に歯止めがかからない。この1年間で朝日新聞は約20万部、読売新聞は約37万部も減らした。中央紙のABC部数は次の通り。
朝日新聞:3,309,247(-200,134)
毎日新聞:1,349,731(-245,738)
読売新聞:5,697,385(-365,748)
日経新聞:1,338,314(-70,833)
産経新聞: 822,272(-63,548)
 なおABC部数には、「押し紙」(販促用の部数)が含まれているので、新聞販売店が実際に配達している部数とは異なる。新聞社によって「押し紙」の割合は異なるが、おおよそ販売店に搬入される新聞の3割ほどが「押し紙」といわれるである。従って実際の配達部数は、ABC部数よりも遥かに少ないと推測される。

◆10%増額要求へ
 コンテンツ産業を支える創作活動の従事者からすべてのみなさんへ
 紙と電子とを問わず、文字、ビジュアル情報に日々接する読者、ユーザーのみなさん、そしてそれを創り出す仕事に勤しんでいるみなさん、表現の現場で働くみなさん、業界のみなさん、経営者のみなさん、すべてのみなさんに訴えます。
 私たち出版ネッツは、成果物の正当な対価がフリーランスにも還元される春闘をと、22年以来、フリーランスの春闘宣言を発し、前世紀からずっと据え置かれたままの報酬の、10%アップに取り組んでいます。
 この業界に働く、私たちのようなフリーランスの編集者、ライター、カメラマン、デザイナー、イラストレーター、校正者だけでなく、著名な作家、文筆家、ジャーナリスト、脚本家など、技術を伴う創作活動の従事者、文字情報作成従事者、クリエーターの多くが、紙とデジタルとを問わず、実に低廉な報酬、前世紀から据え置かれた報酬で仕事をしています。3日間かかる仕事が2万円、またはそれ以下では、生活していけません。
 出版社、コンテンツ・プロバイダー、取次、書店だけが産業ではありません。産業の要請によって輩出され、業界をかたち作っているフリーランスは、コンテンツ産業そのものでもあります。このクリエイティブワークが、替えのきく仕事として軽んじられる業界のままでは、次世代への継承もままなりません。仕事をして生活するという、労働者としての当たり前の循環が危機に瀕しています。創造の源泉である報酬の充実は、どうしても必要です。
 「安い日本」という呪縛から抜け出せていない経済に、毎年数%ずつ上昇する物価高騰が追い打ちをかけ、一昨年から始まったインボイス制度が混乱をもたらしています。インボイス制度によって、大半のフリーランスは減収となり、膨大な事務負担に直面しています。誰も得をしない、誰も幸せにしない制度です。
 昨年11月、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されました。462万人と言われるフリーランスを、取引適正化で保護しようというものですが、生身の働き手である私たちは、さらに労働法制による保護を求めるものです。
 出版産業がコンテンツ・ビジネスへと変容を遂げていく産業状況にあっても、文字情報、ビジュアル情報は、商品であると同時に、文化的で普遍的な価値を持つものです。一方で、何年も何十年もフリーランスの報酬が据え置かれ、クリエイティブワークをコストと見立て、安さにのみ価値を見出すような、働き手を尊ばない産業は必ず衰退します。
 この春闘=春季生活闘争の期間を通じて、多くの企業が賃金アップを実施します。急速な人口減、粘着する人手不足、人材流出の危機感から、政府、財界までもが賃上げに取り組む今、フリーランスを含めたすべての働く者の報酬アップは社会的課題と言えるのではないでしょうか。
 創造の成果を世に問い、知的生産に向き合う、すべてのみなさんに改めて訴えます。フリーランスの報酬を、10%増額してください。雇用労働者だけでなく、フリーランスにも生活給を保障してください。
 フリーランサーは、この宣言を仕事先に示して報酬アップを交渉して下さい。69年目を迎える春闘の果実が、フリーランスにも届く春となることを、すべてのみなさんに訴えます。                                             
ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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