本日3月11日は、福島第一原発事故から14年目を迎えた。この原発事故について最高裁判決は「国の免責」を認めた。最近では、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電旧経営陣3人らの上告審でも、3月6日、「10メートルを超える津波を予測できたと認めることはできない」と、検察官役の指定弁護士の上告を退け、武黒一郎と武藤栄の両元副社長の無罪が確定した。勝俣恒久元会長は昨年10月に死亡し、起訴が取下げられている。
判決を下した最高裁第2小法廷の岡村和美裁判長と草野耕一裁判官は、東電と関係が深い巨大法律事務所出身だ。岡村裁判官の出身は、東電株主代表訴訟の東電側代理人の長嶋・大野・常松法律事務所(弁護士532人所属)。第2の裁判長を退官した菅野博之弁護士は顧問を務める。草野裁判官の出身は弁護士650人を擁する日本最大規模の西村あさひ法律事務所。判事就任前は事務所の共同経営者で、事務所顧問の元最高裁判事は東電の依頼で最高裁に意見書を提出。しかも事務所弁護士は東電の社外取締役だ。
被害者参加代理人は、審理を担う草野裁判官は、東電と利害関係があり、公正な裁判を妨げるとして3月21日の定年退官後に判断することを求めた意見書を3月3日に最高裁に提出していた。結局、聞き入れられなかったのだ。ちなみに第3小法廷の渡邉惠理子裁判官も長嶋・大野・常松法律事務所の共同経営者だった。
2024年度JCJ賞受賞『東電の変節』(旬報社)の著者のジャーナリスト・後藤秀典氏は昨年11月30日のオンライン講演でこう話した。
「(取材した)巨大事務所のベテラン弁護士は『(巨大事務所出身の)最高裁判事は正義とかということにあまり見解を持っていない。人権や正義のことに全然関心がない』と言っていました」「司法修習を終えた弁護士志望者の第一希望は巨大事務所への所属です。高給が約束されていますので決まったら大喜びするそうです」
後藤氏の取材に対し澤藤統一郎弁護士はこう述べた。
「特定の巨大法律事務所が最高裁裁判官の供給源となり、同時に最高裁裁判官の天下り先ともなっている。こうして形成された最高裁と巨大法律事務所とのパイプを中心に、巨大法律事務所が、裁判所、国、企業の密接な癒着構造を形作っている。司法の独立の危機は、新たな段階にある」
深まる癒着構造は、判決をねじ曲げ司法の信頼を失うことになる。
2025年03月11日
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