2025年03月14日

【Bookガイド】3月の“推し本”=萩山 拓(ライター)

 ノンフィクション・ジャンルからチョイスした気になる本の紹介です(刊行順・販価は税別)
◆鈴木エイト『統一教会との格闘、22年』角川新書 3/10刊 1040円
なぜ22年間、一人で追い続けられたのか。2002年、街頭で偽装勧誘活動を偶然、目撃したのをきっかけに、統一教会とかかわるようになった著者。さまざまな嫌がらせ、脅迫、圧力を受けながらも、世間に衝撃を与えた組織の実態を追究し、メディアや多くの人々に訴えてきた貴重な記録である。
 著者は1968年、滋賀県生まれ。ジャーナリスト。著書『自民党の統一教会汚染』(小学館)でJCJ大賞を受賞。
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◆藍原寛子『フクシマ、能登、そしてこれから─震災後を生きる13人の物語』婦人之友社 3/11刊 1500円
災害大国で生きる全ての人へ届けたい。東日本大震災から14年、能登半島地震から1年。それぞれが語る被災体験の貴重な内容は、命と生活を守るための「痛みを伴う教訓」である。内外の被災地を歩く福島在住の国際ジャーナリストが贈る待望のルポ。著者は福島県生まれ。福島民友新聞記者を経てJapan Perspective Newsを設立。阪神・淡路大震災、東日本大震災で支援、取材活動を重ね、能登半島地震では直後から被災地に通い、被災者の様子を伝えた。日本外国特派員協会の2024年報道の自由賞受賞。
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◆椎名 誠『哀愁の町に何が降るというのだ。』本の雑誌社 3/12刊 1800円
装いも新たに『哀愁の町』のメンバーが登場! 新設の荒くれ高校での沢野ひとしとの出会いから、同級生たちとの椿事の数々、瀕死の重傷を負った交通事故での入院、年上人妻との初体験、克美荘での共同生活、そして新生活への旅立ちまで、44 年後の目線で、これまで書けなかったエピソードを中心に、昭和の若者の日々を描き直した傑作。哀感と追憶、入り混じるヒューマンな筆致が心を揺さぶる。
 著者は1944年、東京生れ。「本の雑誌」編集長を経て、旅と食の写真エッセイと著書多数。
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◆河崎秋子『父が牛飼いになった理由』集英社新書 3/17刊 1000円
『ともぐい』で直木賞を受賞した著者は、10年にわたって自然や動物と対峙する作品を書き続けきた。実家は父・崇が「脱サラ」し開業した<河ア牧場>。なぜ、父は牧場経営を始めたのか。その謎を辿るため戦国時代からの家系図を遡る。金沢で武士だった先祖、満洲で薬剤師をしていた祖父、満洲から大阪、そして北海道へと移り住んだ父、そして牧場経営の苦労を背負った祖母と母……。
 400年以上に及ぶファミリーヒストリーが、20世紀の日本と戦後の北海道の酪農史へと繋がっていくノンフィクション。
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◆笹田昌宏『鉄道「幻」巡礼』イカロス出版 3/18刊 2000円
ヒグマに怯えながら北海道の山中で捉えた未開業のコンクリート橋梁、都会の真ん中で切れ切れの姿となった貨物高架橋、戦時中に蒸気機関車を隠すために掘られた機関車避難壕、一般客は乗れなかった「幻」の寝台客車の特別潜入回想、そして一度は完成しながら解体されて姿を消した九州の連続高架橋…。日本全国に散在する「幻」の鉄道、そのリアルな姿を実踏に基づいて解き明かす。
 著者は1971年、大阪府生まれ。医師。作家。第10回旅のノンフィクション大賞受賞。著書に『廃駅。』『日本の保存車100 感動編』など。
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◆後藤正治『文品−藤沢周平への旅』中央公論新社 3/24刊 2300円
 あの「静謐な物語と文体が体内の深い部分に触れてくる感触である。空洞をふさいでくれる…折もあった。癒されていたのかもしれない」と、著者は言う。歳月が持つ哀しみ、自分なりの小さな矜持、人生への情熱、権力の抗しがたい美味と虚しさ。時代小説を舞台に、静謐な文体で人の世の「普遍」を描き続けた作家・藤沢周平。ノンフィクションの名手が、その人と作品の魅力に迫る。
 著者は1946年、京都市生まれ。ノンフィクション作家。『遠いリング』で講談社ノンフィクション賞、他に『奇蹟の画家』など。

◆小林美穂子+小松田健一『桐生市事件─生活保護が歪められた街で』地平社 3/28刊 1800円
生活保護を受給する人数が10年で半減の桐生市。そこで何が起きていたのか。保護費を毎日1000円だけ手渡し、残りは金庫にしまうなど、信じがたい運用が発覚した。桐生市の生活保護行政の暗部を暴く。助けを求める市民を威圧し、支給を徹底的に削る姿勢が、次第に明らかになっていく。支援と取材の現場から迫ったルポルタージュ。
 著者の女性は、群馬県出身、生活困窮者の居場所「カフェ潮の路」主宰。共著者は東京新聞前橋支局長を経て出版部在籍。24年6月に「地域・民衆ジャーナリズム賞2024」受賞。
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posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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