2007年08月12日

BPO放送倫理検証委
TBS「朝ズバッ!」の取材調査不十分を指摘(2)

――TBS系情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」の不二家報道で、 放送倫理検証委員会が審理結果を公表した。今年1月、内部告発に基づく「不二家は賞味期限切れのチョコレートを溶かして、再利用していた」 との報道に、不二家の信頼回復対策会議が「事実無根」と抗議、検証委に審理を求めていた。――
 8日付の産経新聞「主張」(社説)は、このように書き出している。

【主張】「朝ズバッ!」問題 放送界への不信は消えぬ(産経新聞8日付)
http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/shucho/070808/shc070808001.htm

 そして次のように続ける。
――解せないのは、検証委が「放送倫理上見逃すことのできない落ち度があった」としながら、「責任を問うことはできない」とし、 訂正放送や検証番組制作などの勧告を見送ったことだ。――

 産経新聞主張は、検証委の姿勢を「解せない」理由として、次の論を張る。
(1)同番組は4月、告発者が10年以上前の伝聞情報として語ったことを最近の事実のように報道した、と「おわび」し、不二家側も 「経営判断」で受け入れた。しかし、同社が実際に賞味期限切れチョコを再利用していたかという核心部分は不透明なままである。
(2)検証委はTBSの番組制作姿勢、不十分な裏付け取材を問題視し、「わかりやすさ」「おもしろさ」の重視が、 安易な取材態度を生んだのではないかと指摘した。みの氏の「廃業してもらいたい」などの発言にも一方的「断定」や性急な「断罪」 は避ける方が望ましい、と一応は苦言を呈した。
(3)「わかりやすさ」「おもしろさ」への過剰な傾斜は関西テレビの「発掘!あるある大事典II」の捏造(ねつぞう) 問題と通じる放送界の病根だ。厳しい自己抑制が求められるのはいうまでもない。
(4)にもかかわらず、検証委は、告発者が実在したというだけで、「捏造とはいえない」「(裏付け取材などの) 不十分さは内部告発に基づく番組制作の困難さ」としたのはどうしたことか。十分な裏付けのない情報を報道機関が流すのは「自殺行為」 といえる。

 なかなか手厳しい追及だが、12日付朝日新聞社説も「TBSは自浄の姿見せよ」 と厳しい。

「朝ズバ」問題―TBSは自浄の姿見せよ(朝日新聞12日付社説)
http://www.asahi.com/paper/editorial20070812.html

 朝日新聞社説は、検証委員会が出した見解を読むと、<こんなずさんな番組、 ふざけるなよ。打ち切りにしてもらいたいな。みのもんた氏も、自分が当事者でなければ、そう怒りをぶつけたくなるのではないか。 そんな思いがしてくる>という。

 前述の産経新聞「主張」は、「TBSも検証委も、 国民のテレビへの視線がかつてなく厳しくなっていることを自覚すべきであろう」と結んでいるが、朝日新聞社説も検証委に対して、「委員会は、 TBSに第三者調査機関の設置などを勧告せず、見解表明にとどめた。ここは勧告に踏みきり、厳しく責任を問うべきでなかったか」と問い、 TBSに対しては<見解にとどまったことで、TBSはほっとしてはいけない。検証番組をつくり視聴者への説明責任を果たすべきだ。 関西テレビの「活性化委員会」のような第三者機関を設けることも必要だ>と注文をつけている。

 産経新聞の「主張」と朝日新聞社説が、 同じようなベクトルをもつ論を張っているのを読み比べること、それだけで興味がわくといっては言いすぎなのかもしれないが、実は、 論の展開の仕方にはかなりの違いがある。

 朝日新聞社説は以下のように、論旨を展開する。

(1)番組は1月の放送で、 不二家が賞味期限切れのチョコレートを再利用していたと報じた。「廃業してもらいたい」。みの氏はズバッと言い切った。
(2)不二家は「期限の切れたチョコレートが工場に戻ることはない」と抗議した。TBSは4月の放送で、「誤解を招きかねない表現があった」 と訂正、謝罪した。証言した元従業員が不二家で働いていたのは10年以上前だったうえ、「チョコレートが工場に戻る」 と語ったのは伝聞だったという。
(3)検証委は、この二つの番組を対象に調査を重ねた結果、証言の捏造(ねつぞう)はなく、 訂正放送によって視聴者の誤解は解かれたと判断する一方で、番組の取材や演出方法に「放送倫理上の問題があった」と指摘した。たとえば、 取材者は元従業員がクッキーについて話すのをチョコレートのことと誤解していた。
(4)甘い取材にもとづいて、みの氏は不二家の廃業まで口にした。制作者と司会者との打ち合わせも不十分だったと言うしかない。 番組づくりの態勢そのものが深刻な欠陥を持っている、と委員会が指摘したのは当然だろう。
(5)検証委は、訂正放送が打ってかわって不二家にすり寄る不自然な内容になっていたことも問題にする。スタジオには不二家の商品があふれ、 みの氏は「販売再開はうれしい」などと語った。だがみの氏からは前言の撤回や謝罪はなかった。
(6)そもそも期限切れ商品の再利用はあったのか。核心をあいまいにした訂正とおわびは番組の信頼性を損ねる。この委員会の指摘は鋭い。

 このようにみてくると、両紙の論旨は似ているが、 実はかなり異なった情報分析に基づいていることがわかる。
 産経新聞は8日、朝日新聞は12日と、取り上げた日付に違いもあるが、基づいているのは同じ検証委の6日発表の「見解」である。

 たとえば産経新聞は、
A)不二家が実際に賞味期限切れチョコを再利用していたかという核心部分は不透明
B)検証委はみの氏の「廃業してもらいたい」などの発言にも一応は苦言を呈した
 と「見解」を解説し、そのうえで検証委の姿勢を「解せない」という。

 この点について朝日新聞は、次の立場に立つ。
A)証言した元従業員が不二家で働いていたのは10年以上前だったうえ、「チョコレートが工場に戻る」と語ったのは伝聞だったという。
  取材者は元従業員がクッキーについて話すのをチョコレートのことと誤解していた。
  そもそも期限切れ商品の再利用はあったのか。核心をあいまいにした訂正とおわびは番組の信頼性を損ねる。この委員会の指摘は鋭い。
B)みの氏は不二家の廃業まで口にした。番組づくりの態勢そのものが深刻な欠陥を持っている、 と委員会が指摘したのは当然だろう

 つまり、産経新聞「主張」は、TBSに対しても、検証委に対しても厳しい論調を貫き、 朝日新聞はTBSに(1)検証番組をつくり視聴者への説明責任を果たすべき、(2)関西テレビの「活性化委員会」 のような第三者機関を設けることも必要、と求め、検証委に対しては(1)TBSに第三者調査機関の設置などを勧告せず、 見解表明にとどめたが、勧告に踏みきり、厳しく責任を問うべきでなかったか、(2)検証委員会は、関西テレビの「発掘!あるある大事典2」 の捏造事件をきっかけに設けられたのだから、国家の介入を招く前に放送界の自浄力を示すという目的を達成するためには、 放送局に甘いと視聴者から見られてはなるまい、と詳細な論陣を張っていることがわかる。

 同じ資料、同じ情報を読み込んで、これだけの「違い」が出る。この二つの社説の「違い」 は、各紙の論評を読み比べるうえで、たいへん参考になるように思う。検証委員会の「見解」に直接あたりながら、 この二紙の違いを論じ合ってみることで、意外な発見があるかもしれない。


BPO(放送倫理・番組向上機構) の放送倫理検証委員会
http://www.bpo.gr.jp/kensyo/index.html

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JCJふらっしゅ Y記者の「ニュースの検証」
小鷲順造
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posted by JCJ at 23:17 | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする