2025年04月10日

【オピニオン】核廃絶こそ「ヒロシマ」の責務だ 安保ただ乗り論再燃 日本の米追従岐路に=難波健治(広島支部)

 3月16日朝、テレビの報道番組が速報を伝えた。「米軍がイエメンを空爆。首都サヌアで民間人13人が死亡した」。世界の各地で戦争が続発する時代に入ったのか――そんな不安が頭をよぎった。問題はその約2週間前、ロシアへの対応をめぐるトランプ、ゼレンスキー首脳会談の決裂だ。

 ウクライナ侵略後、「核使用」をちらつかせるプーチンを相手に、核超大国2国間主導の「停戦」を持ちかけるトランプの米国。「核廃絶」に背をむける米国の姿勢はトランプ再登場で、新たな局面に突入し、これまでの日本の米国追従が岐路迎え今後どうしていくべきかが改めて問われることとなった。

 3月15日、広島では「教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま」主催の市民シンポジウムが開かれた。シンポは、本紙でも報告してきた2年前の広島G7サミット開催の5月ごろから続く被爆地広島のありようを変質させる一連の出来事の発端に迫り、広島の平和教育を転換させようとする動きの「根っこ」を改めてあぶり出すものとなった。
 シンポは広島市の平和教育の副教材『ひろしま平和ノート』の改訂問題を取り上げ、削除された内容と代わりに掲載された文章を比較検討した。

 漫画『はだしのゲン』や第五福竜丸事件の記述などが消えた『ひろしま平和ノート』に載ったのは、米国の原爆投下を「許し」、「和解」をすすめる文章だった。
 そこから浮かぶ改訂の狙いは、平和学習の課題を「核兵器廃絶」から「核軍縮」に後退させることだ。広島市教委が取り組んだのは、生徒に米国の核抑止政策を受け入れさせる平和教育だったのだ。
 そして今、再登場を果たしたトランプ政権は「我々は日本を守らなくてはならないが、日本は米国を守らなくていい」と、日米安保条約に不満を表明した。

 大統領令乱発など、やりたい放題の米国の盟主が蒸し返した持論に、私たちはどう対応すべきなのか。トランプ発言を受け、広島支部の仲間はSNSで発信した。
 「石破首相は国会で『日本は米軍に基地を提供する義務を負っており、不平等とは思わない』と述べた。私は、トランプ氏がそこまで言うなら日本の米軍基地をすべて撤去してください、と石破首相には言ってほしかった」
「自宅から20`余りのところに、アジア最大級となった米軍岩国基地がある。戦闘機の騒音が聞こえない日はないくらいだ。米兵が事件を起こしても、基地に逃げ込めば日本の警察は原則手を出せない。女性の性被害も多発している。米軍住宅は日本の平均的な住宅よりも格段に立派で、電気代、水道代はタダ、高速道利用も無料だ。これらの経費はすべて私たちの税金から支出されている。『不平等』と言いたいのはこちらの方だ。トランプさん、今すぐ基地を撤去して米兵を本国に帰してください」

 日本が米国言いなりで大軍拡を進める背景には、「中国脅威論」がある。その「脅威」は、現実にどのようなかたちで存在するのか、あるいは存在しないのか。その見極めが欠かせない。このことにも、彼は言及した。
 混迷を深め、戦争への足音が日を追って高まりつつある世界にあって、私たちは日々起きる出来事の背景にあるものを浮かび上がらせ、事柄の本質を見極める報道を求めている。平和に向けて進むジャーナリズムの実現が、おそらく「戦争か平和か」の分かれ道だ。私たちは報道現場で活動する記者たちとの連携を深めていく努力を続けたい。
       JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年3月25日号
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | オピニオン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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