2025年04月27日

【焦点・反ユダヤ規制1】トランプ政権の政策に強い影響力キリスト教福音派はどんな組織なのか、なぜ意向を反映できるのか=橋詰雅博

 トランプ米政権は、リベラル系の大学への締め付けを強化し、それに抗うなら助成金の取り消しなどの措置で圧力をかけている。
 著名なエリートを輩出している名門ハーバード大への介入はその代表例だ。反ユダヤ主義的な活動やDEI(多様性、公平性、包摂性)の見直しを拒否した同大への助成金22億ドル(約3100億円)と6000万ドル(約56億円)相当の契約金の支払いを凍結した。さらにトランプはハーバード大が今後も「テロリストを支援するような『病的』な行動を押し進めるなら、免税資格措置を剥奪し政治団体として課税すべきかもしれない」と4月15日自身のSNSに書き込んだ。

圧力屈する大学も

 教育機関や宗教団体などが対象になっている連邦所得税の不払いを停止させるとブラフ≠かけた。これに対してハーバード大はトランプ政権による助成金凍結の見直しを求める訴えをマサチューセッツ州連邦地方裁判所に21日起こした。
 トランプ大統領の方針を受けた米教育省は、反ユダヤ的活動に対するユダヤ系学生の保護義務違反として約60の大学をリストアップした。ハーバード始めコロンビア、エール、プリンストンなど名門校が並ぶ。コロンビア大は助成金4億ドルを差し止められた。。プリンストンも数十件の研究助成金の凍結・打ち切りをされた。

 反DEIについても「違反調査」対象校としてマサチューセッツ工科大(MIT)など有名校など約50校を米教育省は公表。全米大学・カレッジ協会(AAC&U)は「真実の追求や表現の自由など、大学の存在意義の根幹を脅しかねない」と表明した。
 しかし助成金を打ち切られたら研究プロジェクトの中止や停止に追い込まれるので、トランプ圧力に屈する大学もある。パレスチナ自治区ガザへのイスラエルの無差別攻撃に対する抗議デモを起こし全米に広がる起点となったコロンビア大は政権の要求を受け入れ新ガイドラインを作成した。

SNS投稿を審査

 外国人の教員や留学生などを対象にSNS上での反ユダヤ主義的な言動取り締まり強化に乗り出した。発見したら永住権申請の外国人教員や学生ビザ(査証)の申請を却下すると移民局は発表。ノーム国土安全保障長官は「(表現の自由を定めた)憲法修正第1条に守られていると思う外国人は考え直せ」と表明した。
 カリフォルニア州立大学助教授の大矢英代(はなよ)氏は4月14日付東京新聞コラムで「近い将来、(イスラエルによる)ガザへの大規模攻撃と接収が始まるのではないか、一連の政策はそれに向けたSNS上の自己規制、萎縮効果を狙った事前対策なのではないかと不安でならない」と述べている。

信者1億人に急増

 この背景には、トランプら共和党の岩盤支持層でイスラエルを強く支持するキリスト教保守の福音派の意向が反映しているという見方が多い。
 米国の政治・外交に詳しい上智大学教授の前嶋和弘氏も「日本で見落とされがちなのが、キリスト教福音派の強い影響だ。気候変動対策の否定や性的マイノリティーの否定、イスラエルの徹底支援など一連の『常識の革命』政策はみな、この教派の主張に沿っている。ここに注目すれば、(トランプ)大統領の行動意味がよくわかる」(日本経済新聞3月19日)とインタビューに答えている。

 大注目のキリスト教福音派はどんな組織なのか。簡単に言えば、聖書の一字一句をそのまま信じキリストの教えに基づく信仰生活をしている人たちだ。一般的に宗教保守≠ニ呼ばれ、妊娠中絶や同性婚、教育現場への進化論導入などに強く反対してきた。パレスチナ人を追い出したユダヤ人が創設したイスラエル国家の支援者でもある。米国で約1億人が福音派とみられる。米人口の約3分の1を占める福音派は大統領選挙で共和党支持の積極的な活動をする。レーガンを当選させたのが原点になっている。
 
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 焦点 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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