2025年05月02日

【リレー時評】「鹿児島県警の闇」は特異なものか=白垣詔男(JCJ代表委員)

 JCJ福岡支部が団体会員になっている「NHKを考える福岡の会」の総会と記念講演が3月22日にあった。記念講演の講師は、福岡市に拠点を置くニュースサイト「ハンター」代表の中願寺純則さん。「これでいいのか、日本のマスコミ」と題して話してもらった。
 中願寺さんは最初に「顔出しはダメ」と断って、これまでも顔写真はどこにも出していないと説明した。理由は「65歳になりましたが、この齢になっても張り込みに行くことがあり、顔が知られると困る」という。しかも、「金銭にはきれいにしたいので講演謝礼は、どこからも受け取らない、訪問者の手土産も」と徹底している。

 それを痛感したのが、講演時間を「70分ぐらいで」とお願いしたら、きっちり70分で話し終わった。その後の質疑応答は、質問がある限り、丁寧に答えてくれた。その誠実さに感心しながら快い時間を過ごすことができた。
 さて、講演で中願寺さんは、鹿児島県警の元生活安全部長が北海道在住のジャーナリストに送った、同県警が隠ぺいしている「不祥事」の内容を書いた手紙の中身を紹介した。この手紙の1枚目には「闇を暴いてください」と書かれており、その2枚目から「不祥事」4件が書かれていた。この4件を明らかにするのは、この講演が2回目という。

 そこには、「警察の保有する情報を悪用したストーカー事案」「警察官による盗撮」「警視による超過勤務詐取事案」「署員のストーカー事案2件を発生させた署長が生安部長着任」の4件が書いてあったという。
 それらについて中願寺さんは鹿児島県警本部に直接取材したほか、「被害女性」にも面会して話を聞いた。
 その中で、元生活安全部長ら地元警察官は逮捕、起訴されたが、警察庁から赴任してきた若い元捜査二課長は、「停職1カ月」で決着している。その決着について、鹿児島県警は3月21日、記者会見をして発表。中願寺さんの講演があった当日(3月22日)朝刊で、各紙は報道した。その中で西日本新聞は社会面トップ、解説まで付けて「『内部告発』は逮捕、対応に差」との見出しで、鹿児島県警が警察庁からのキャリア警察官に「大甘の処分でバランスを欠く」と指摘している。しかも、ジャーナリスト大谷昭宏氏の談話「告発は正義のためだった可能性が高く、行為の悪質さを考えても安部警視(筆者注=キャリア警察官)の処分と比べて非常に公平性を欠く。組織が明らかに機能不全を起こしている」まで付けている。

 この扱いを中願寺さんは絶賛。「権力側から報道する記者が多い現状の中で西日本新聞には真のジャーナリストがいる」と発言。他のマスコミの大半の記者は「真のジャーナリストとは、かけ離れているものが大半だ」と結論付けた。

 鹿児島県警が一貫して「内部組織を守る」姿勢を取ったうえで、警察庁に悪い印象を持たれないように、出向警察官に対して、甘い処置を貫くのは、同県警の特異なものなのか、それとも、「鹿児島県警警察官の闇」が表に出たばかりに目立ったものなのか―。
             JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年4月25日号
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | <リレー時評> | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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