2025年05月08日

【映画の鏡】障害ある娘と家族の歩み追う『大好き〜奈緒ちゃんとお母さんの50年〜』広がる自主上映、シリーズ第5弾=鈴木 賀津彦

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                   いせフィルム

 重度のてんかんで知的障害があり、幼児期には医師から「長くは生きられない」と言われた西村奈緒さんが、一昨年50歳を元気に迎えるまでの家族の日常を撮り続けてきた伊勢真一監督。「奈緒ちゃんシリーズ」第5弾として昨春の完成以来約1年、劇場公開のほか、福祉団体などによる自主上映活動も地道な広がりをみせており、注目したい。

 「いのちのことに思いを巡らせる50年の記憶です」。伊勢監督は奈緒さんの母、信子さん(82)の弟で、初めは「元気なめいっ子を撮っておこう」という気持ちからだった。「でも奈緒ちゃんはどんどん元気になって、なんでこんなに魅力的なんだろうと思った」ことから、節目で作品にまとめてきた。

 「彼女が家族に育まれ、家族が彼女に育まれた」少女時代の12年間を記録した『奈緒ちゃん』(1995年公開)から、信子さんが地域の仲間と障害者の共働作業所を立ち上げた取り組みを柱に2作目の『ぴぐれっと』(2002年)、奈緒さんが家を離れてグループホームで自活を始めた時の『ありがとう』(06年)へと続く。相模原市内の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で多数の入所者が殺害された事件の翌年の17年には、伊勢監督の事件に対峙するメッセージとして『やさしくなあに』を公開。「けんかしちゃだめ、やさしくなあにって言わなくちゃ」と口にする奈緒さんの言葉が周りを明るく和ませる。

 今回は80代の信子さんの「終活」がきっかけ。数年前に心臓の手術を受け、最近は奈緒さんに手を引かれて坂道を上るようになった信子さんは「奈緒が力をくれたと、このごろ本当に思う」と話す。  
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 映画の鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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