職場での暴力行為、さらにタクシー券の記入ミスの説明を始めると「認知(症)だ、認知だ」と叫んだ。NHK子会社グローバルメディアサービスの報道部門の元部長(元NHK記者)と会社を非正規労働者の私が訴えた。
1年半後のことし3月25日に会社は「原告加入の労組の防止規程の協議申し入れに誠実に対応を誓約」、また認知発言だけは認めた被告元部長とは「解決金3万円を支払う」ことで和解が成立した。
昨年12月、9回に及んだ口頭弁論ののち進行協議で鈴木昭洋裁判長から「2つが事実だとしても法的責任を問うのは難しい」と和解をすすめられた。損害賠償請求は「棄却」すなわち敗訴ということのようだ。暴力行為は「記憶にない」としたため状況証拠集めに苦労していた。
「あなたの望みは何ですか」と聞かれたので、調査内容を一切明らかにせず私の再調査の訴えも門前払いにした会社の「ハラスメント防止規程を変えたい」と答えると「あなたの理想とするモデル案を和解提示すれば話は早い」と言われた。
現行規程の問題点や国家公務員のパワハラ防止の人事院規則の運用などを参考に6項目の協議事項を出した。
和解案がほぼ整った2月末、裁判長は「提訴された意味はおおいにあったと思います」と話された。刑事事件の人情裁判官が判決に添えて言う「諭し」が浮かんだ。代理人の青龍美和子弁護士(東京法律)もこんなコメントは「珍しい」と言った。また確定後の記者会見で青龍先生は「判決では得られない和解内容となった」と評した。
思い返せば「勝利的和解」の予兆は第6回で裁判官が1人から3人の合議体となったことだった。毎回満杯にしてくれた支援者が、法廷が倍の広さになっても埋めてくれた。注目度から裁判所も「単なる損害賠償訴訟とは捉えていないのではないか」と推測した。
和解調印の日。”勝利“したものの「誰でも裁判が起こせる訳ではないですよね」と話すと「原田さん、組合があったからでしょ」と青龍先生に諭された。
職場に組合はない。迷った挙げ句、NHKの職員、OBらの「放送を語る会」に一人でも加盟できる民放労連放送スタッフニュにオンを紹介されたことが始まりだった。
NHK本体のハラスメント防止規程も私の所属する子会社の規程も同一同文である。本番の闘いはこれから始まる。76歳。来年1月の喜寿が私の退職日である。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年4月25日号