OJN(沖縄ジャンプナイト)主催のオンライン講演会は、「琉球新報」編集委員の南彰さんを講師に迎え、4月6日に開催された。参加者は30人。講演の要旨は以下の通り。
琉球新報(以下、新報)に転職して1年5カ月、戦後80年の報道状況と台湾有事の名のもとに進む沖縄南西シフトの軍事強化が重なり合うのを日々実感している。
国会では軍事強化に歯止めをかける議論がまったくされず、それどころか、政治家からは「闘う覚悟」「一戦を交える」などの好戦的な発言が出てくる状況である。このような発言が跋扈する言論空間に抵抗する言論空間を作っていきたい。
新報に移ってから「闘わない覚悟」「歩く民主主義100の声」「国策と闘う」「信なき現場」「ハラスメントのない社会」の企画を手がけている。
私の報道姿勢は、筑紫哲也さんが掲げた@権力に対する監視役、A少数派であることを恐れない、B多様な意見を登場させて社会に自由な気風を保つ、を大事にしている。
@では、南城市長のセクハラ疑惑、辺野古新基地建設、軍事化などの報道がある。好戦的な言説の広がりに抗う軸として「国策と闘う」を企画した。住民の目線でどう抗っていくのか他紙と連携しながらさまざまな事例で取り上げている。
辺野古新基地建設では、国策の名のもとに市民の抗議行動を潰す言説が、本土メディアや現場でのバッシングによって勢いを増している。これに対し「信なき現場」の連載(3回)では、現場取材を重ね事実関係を提示して一方的な言説への歯止めを図った。
Aでは、「新しい戦前にしない」をテーマに「闘わない覚悟」を本土と沖縄の方の対談形式で企画。80年前と同じ過ちを繰り返さないためにどうしたらよいのかに取り組んでいる。直近では具志堅髀シさん(ノーモア沖縄戦共同代表)と古賀誠さん(元自民党幹事長)が登場、沖縄戦の教訓や国会での憲法9条議論、戦争責任への向き合い方などを議論してもらった。
Bでは、「歩く民主主義100の声」として無作為に選んだ100人に街頭や戸別訪問で話を聞き、世論調査には現れない地域で暮らす住民の複雑な民意を汲み取るねらいがある。辺野古新基地建設、自衛隊基地建設、重要土地利用規制法などのテーマで聞いていくプロセスが、民主主義を考える場になっている。
新報に移ってきてよかったと思うのは、読者との距離感が非常に近いこと。調査報道の重視に読者からの手応えを感じる。
最近のフジテレビ問題は、これまで新聞労連がジャーナリズムの信頼回復のために記者会見、セクハラ、賭け麻雀など一連の問題を受けて声明や提言をだしたが、それを顧みないツケが吹き出したのだと思う。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年4月25日号
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