2025年05月29日

【横浜市メディア威圧1】新聞社・通信社に圧力文書 「報道の萎縮が目的」市民、撤回求め抗議行動=井浦 徹

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 神奈川新聞の4つの記事に対し、横浜市が内容に介入する文書を神奈川新聞社に提出していたことが明らかになった。文書は昨年11月〜12月にかけ、政策経営局報道担当部長名(3通は関係部長と連名)で出された。市が「問題だ」と主張した各記事のポイントは次の通り。()内は対象とされた記事の掲載日。

国際プールや
ふ頭再開発計画
@横浜国際プール再整備関連の2つの記事
(昨年11月20日・12月11日)
夏はプール、冬は体育館として使ってきたアリーナを通年体育館にする計画案に対し、「(結論ありきで進めて来たかのような)一方的な見解を記載したことは、読者に対して偏った印象を与える」
A山下ふ頭再開発検討委員会に関する記事
(12月10日)
「山下ふ頭の再開発を『行政主導の開発』と位置づけ、『市民意見を踏まえたまちづくり』とは相反するものという前提に立った論旨になっている」
B横浜市庁舎に関する記事(12月5日)
「市民の会が主張する『横浜市庁舎の閉鎖性は他自治体と比較して突出している』という内容について新聞社としての事実確認を行った形跡が読み取れない」
 などといった指摘をしている。
 4通の文書は、「市民に誤解を与えない公平性を担保した記事掲載を求めるとともに、本市の見解について御社の回答を文書で求める」と締め括られ、4通の内3通は翌営業日までの回答を求めている。
 1月9日の横浜市長定例会見で神奈川新聞記者が見解を問うたが、山中竹春市長は経緯や内容を「把握していない」と答えた。

神奈川新聞は
「事実に基づく」
 翌10日、神奈川新聞は「横浜市が『公平性』求め神奈川新聞社に抗議文」の見出しで経過を報じた。その上で、いずれも適切な取材で判明した事実に基づく記事であり、市の文書は「報道の委縮」を目的とした圧力と判断、市への文書回答を保留にしている、と表明した。
他紙の記者も定例会見で文書の適切性について質問したが、市長は「所管と担当記者のやり取りだと承知している」と回答。問題ないとの認識を変えなかった。
 新聞労連は、2月17日に「横浜市による度重なる『報道介入』に抗議」の声明を発表。この中で、全国各地で首長や議長が取材活動への妨害や制限をする事態が相次いでいると指摘し、公権力による不当介入に抗議の意思を示すと宣言した。
2月20日の横浜市会本会議では2人の市議が、「部長名文書は職務権限の軽易な照会を超えた文書だ」などと市長に質したが、市長の答弁の内容は終始曖昧だった。

「考える会」結成
文書撤回求める
 ことの重大性をいち早く感じた市民が情報開示請求をしたところ、市が10月28日付で共同通信社に対しても抗議文を出していたことが判明。
市民は「公権力とメディアの関係を考える会」(竹岡健治代表)を結成し、2月5日に新聞社への文書撤回を求める市長陳情を60数名の連名で提出した。
 これに対して山中市長は「事実誤認については訂正を求めたり、記事内容の正確性について指摘や申し入れすることはある」とし、「今回もその一環」との回答にとどまっている。
 市民は3月24日、横浜市庁舎前で抗議行動を行った=写真=。
           JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年4月25日号
 

posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 関東・甲信越 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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