2025年06月02日

【月刊マスコミ評・新聞】国際協調の道義説くのが日本の役割=六光寺 弦

  敗戦から80年の憲法記念日。新聞各紙の5月3日付社説では、国際協調を危うくしている米国とトランプ大統領への言及が目を引いた。
 毎日新聞は、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ攻撃など「世界の混沌」にトランプ氏の復権が追い打ちをかけていると指摘した。
 
 ロシアに有利な和平案の提示、自由貿易体制の土台をむしばむ高関税政策、移民規制強化を始め排外主義的な大統領令の連発など。「規範を踏みにじり、政治・経済の両面で『力による現状変更』をごり押ししようとする政治姿勢」はロシアなどと同じだという。
 朝日新聞も「米国は自由と民主主義の牽引車を自他共に認めてきたはずだが、豹変に目を疑う」「多様性を目の敵にし、言論や学問の自由も意に介さず、全てはカネ勘定であるかのように振る舞って恥じる様子がない」と強い表現で批判した。

 平和主義と国際協調主義を掲げる日本国憲法の意義は重みを増す。朝日は「普遍の原理を掲げた憲法を改めて選び取る時である」と訴えた。
 読売新聞にはトランプ批判は見当たらない。敵基地攻撃能力を例に、防衛力強化に米国の協力が必要と指摘。「日本自身が平和を守るために努力し続けることは欠かせない」「そうした観点からも、憲法を見直すことは避けて通れまい」と社是の改憲を説く。

 驚いたのは「『9条』の限界を直視せよ」との見出しの産経新聞だ。
 トランプ大統領が日米安保条約について、日本は米国を守る必要がないと不満を述べたことを引き合いに「トランプ氏の方が世界の常識を踏まえている」と強調。憲法9条によって全面的な集団的自衛権の行使が禁じられていることを「非常識」と断じた。

 日米安保体制を巡る認識の偏りをただすわけでもなく、自己の改憲主張を通すためなら、迎合もいとわないのか。
 平和憲法を持つ日本の役割を明確にしたのはいくつかの地方紙だ。北海道新聞は「今度は日本が、自国第一の殻にこもる米国に国際協調の道義を説く番ではないだろうか」と問いかける。
 中国新聞も「国際社会が積み上げた秩序やルールをないがしろにしないよう、トランプ氏に注文するのも同盟国の役割ではないか」と指摘した。
            JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年5月25日号
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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