歴史的な名建築の旧市庁舎を一部取り壊し、超高層ビルを建設する横浜市の再開発事業を不当とする訴えが市民から起こされている。JCJ神奈川支部は、4月26日横浜市内で例会を開き、「横浜市民の財産を守る会」の高田尚暢代表に話を聞いた。
2020年6月に竣工した横浜市の新市庁舎は、高さ155m、32階の高層ビル。林文子前市長時代の2013年にそれまでの市庁舎から移転することが決定された。
庁舎建設の傑作
横浜スタジアムに隣接し、JR関内駅前という好立地にある旧市庁舎は1959年に建てられた多くの近現代建築で知られる村野藤吾の設計で、行政棟と市会棟を「市民の広場」という空間で結んだ独創的な建築だ。「市民広場」には巨大なタイルレリーフの壁画が飾られ、大規模市庁舎建築の傑作と評価が高かった。
19年1月には旧市庁舎街区の開発事業者が募集され、事業者は三井物産グループに決定した。20年12月には予約契約を締結、建物は7700万円で事業者に売却し、土地は月額およそ1777万円、77年間の賃貸借契約とされた。
21年8月に行われた横浜市長選挙では、旧市庁舎問題が争点となった。当選した山中竹春市長は「契約価格を検証する」と発言したが、当選1か月後の9月30日に本契約に調印し、「契約価格は妥当」と方針転換した。
監査請求は棄却
高田氏によると、住民訴訟すると決めたのは、20年12月に、開発計画の不当を先行して訴えていた横浜市議2名の裁判を傍聴したのがきっかけ。高田さんのグループも旧市庁舎が不当な安値で売却されるのを防ごうと21年3月に500名で横浜市に対し監査請求を行ったが棄却され、5月には旧市庁舎の売却と土地の貸し付けの契約差し止めを求めて86人で提訴した。
しかし旧市庁舎街区の開発計画は進行し、市会棟と市民広場は解体され、敷地には高層ビルが建設、25年12月には完成する。
似かよう再開発
原告の数の多い共同訴訟は裁判所との調整に時間が掛かる。弁護士を立てると多額の費用を要するため、本人訴訟とした。原告自身が準備書面を書くことで参加した市民の情報収集力や表現力等が養われる、と高田氏はいう。
裁判で原告側は独自の不動産鑑定を提出し、建物の評価に壁画などの美術品が含まれないのは不当とする主張を展開している。
高田氏は少子高齢化で予想される将来の税収減を解決するため、行政は開発を促進するが、そうした開発はどこでも類似している。開発の骨子の決定に市民が関われず、市民が計画を知る頃には官民一体で計画が決定され ている、と指摘した。
集会はZOOMでも中継され、会場参加者と合わせて42人が参加した。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年5月25日号
2025年06月10日
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