2025年06月18日

【1票の格差訴訟】選挙権を住所によって差別する国 11ブロックの立法が人口比例選挙のカギ=一人一票実現国民会議運営委員 鶴本 圭子さん寄稿

 2024年衆院選(小選挙区)は、1票の最大較差が2.06倍の非人口比例選挙だった。それを不服として289小選挙区の全てで原告が立ち、全14高裁・高裁支部で人口比例選挙請求訴訟を提起した。結果は、全14高裁・高裁支部で合憲であった。

“主権の行使”
最高裁は認識

 日本は、国民主権国家である。「主権」とは、「国家の政治のありかたを最終的に決定する権力」と定義されている。
 最高裁は、国民の国政選挙の選挙権の行使は、国民の“主権の行使である”と捉えている。
 国民は、選挙当日に投票する各自の1票で、主権(「国家の政治のありかたを最終的に決定する権力」)を行使する。しかし、その1票の価値が、住所によって大きく差別されているのである。

「非」人口比例
日本の選挙だけ

 「主権」(「国家の政治のありかたを最終的に決定する権力」)は、内閣総理大臣(行政府の長)を指名することを含むので、【内閣総理大臣を指名すること】は、主権の行使に該当する。
 行政府の長(首相、大統領)を決定する選挙について言えば、主要5民主主義国家(米、英、独、仏、韓)は、すべて人口比例選挙又は概ね人口比例選挙である(上表参照)。
 川人貞史選挙区画定審議会会長(元衆議院議員)が述べる通り、格差2倍(衆院選)、格差3倍(参院選)の日本の非人口比例選挙は、「きわめて異質であり,世界標準の方法から逸脱」(強調:引用者)した異常な選挙なのである。

「合憲」性判断
基準を変えた

 裁判所は、これまで、選挙当日の投票価値の不均衡についての合憲性を判断してきた。しかし、今回の全高裁判決では、選挙当日ではなく、当該選挙の数年前に実施された国勢調査時の人口で判断し、選挙当日に2倍を超えていることは不問とした。
 国民は、選挙当日に投票する各自の1票で、主権を行使するにも拘わらずだ。

「1票の格差」
合理性ない

 今年7月の参院選でも格差3倍が続く。ここで注視すべきは、宮城県選挙区では、2013年参院選では格差2倍だったが、2016年、2019年、2022年の各参院選では格差3倍に悪化していることだ。当該悪化につき、具体的な理由は国会においても、判決においても示されていない。
 宮城県選挙区の1票の価値は、福井県選挙区の3分の1、つまり、0.33票分でしかない。「1票の格差は地方の声を届けるために合理性がある」と連呼する立法府やマスコミは、明らかに国民を誤導している。 

人口に比例は
11ブロック制

 最大判令和5年10月18日(参)は、「較差の更なる是正を図ること等は喫緊の課題」(強調:引用者)、「都道府県より広域の選挙区を設けるなどの方策…によって都道府県を各選挙区の単位とする現行の選挙制度の仕組みを更に見直すことも考えられる」(強調:引用者)と記述する。
「都道府県より広域の選挙区」とは、11ブロック制を含む。11ブロック制選挙では、全有効投票者の49.85%から全参院議員の50.1%(過半数)が選出されるので、 実質、人口比例選挙である。

 平成25(2013)年より、合区制もしくは11ブロック制の2択で議論が続いているが、合区制には根強い反対が報告されている。公明、維新、共産(ただし、10ブロック)、社民などは11ブロック案を提示している(公明案では最大1.13倍)。

日本の現状は
国難の只中だ

 全世界のGDPの中で、日本のシェアが、1995〜2023年の29年間で17.6%から4.0%に激減した。また、日本及び上記主要5か国で、1992〜2020年の29年間、国民一人当たり「平均賃金」が増加していないのは日本だけである。日本は、国難の只中にあると言えよう。
 この国難を乗り越えるためにどのような政治を選択するかは、主権者である国民に決定権がある。そして、その決定権の行使の手段は、「選挙当日の1票の投票以外にない」。

 衆院選については今年中、7月参院選についても来年秋には、最高裁判決がでるであろう。
日本が、憲法どおりの人口比例選挙の国になるか、世界的に異常な非人口比例選挙の国のまま固定してしまうのか、今崎長官他14人の最高裁判事の賢明さと勇気にかかっている。
          JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年5月25日号
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | 選挙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック