2025年06月24日

【出版トピックス】6月─フリーランス新法を順守すべきだ=出版部会

◆小学館と光文社に公取委勧告
 公正取引委員会は、6月17日、両社が業務を委託していたフリーランスのライターなどに報酬額や支払期日などの取り引き条件を明示しなかったとして、再発防止を求める勧告を行った。去年11月にフリーランス新法が施行後、勧告が出されるのは初めて。
 フリーランスで働く人が安心して働ける環境を作るための新法は、業務を委託した事業者に対して書面などで報酬額や支払い期日といった取り引き条件を直ちに明示することが義務づけられたほか、業務委託の期間が1カ月以上の場合は通常よりも報酬を著しく低くする「買いたたき」などの行為が禁止された。
 小学館は、12月の1か月間、フリーランスのライターやカメラマンなど191の事業者に、また光文社も今年2月までの4カ月間、フリーランスの31の事業者に、報酬額を明示せず期日までに報酬を支払っていなかった。小学館はおよそ2000人、光文社はおよそ4000人のフリーランスと取り引きがあり、詳しい取引条件を明示しないまま口頭で発注することが常態化していた。
 小学館、光文社は共に社告でお詫びしたうえで、「全社一丸となって法令順守を徹底する」と発表した。今回の勧告は、新法を会社に守らせるのはもちろんだが、フリーランスの人が気持ちよく働き、取り引きができる環境を作っていく、大切な第一歩である。

◆経産省の“本屋復興”戦略
 6月10日、経産省など関係7府省庁が連携し、書店を「地域の文化拠点」と捉え、『書店活性化プラン』を発表した。さらに『書店経営者向け支援施策活用ガイド』も公開され、街の書店が直面する課題への包括的な施策が示された。
 かつて日本全国に15,000店以上あった書店は、現在では約10,000店へと減少。特に中小規模の街の書店の閉店が続き、無書店自治体が493に上るという深刻な状況。背景には雑誌販売額の長期的低下やオンライン書店の台頭、さらには後継者不足といった複合的な要因が絡んでいる。
 小規模書店に向けた補助金制度の導入─これは、古書販売への参入やイベント開催による来店促進など、収益性の高い取り組みに対して最大50万円(創業型では200万円)を補助する。また「IT導入補助金」では、POSレジや受発注システムの導入により業務効率化を促進。
 図書館・自治体との連携─書店と図書館が共同で読書イベントを開催し、地域の学校とのネットワークを構築する。図書購入や新刊貸出における書店との取引実態の可視化も進める。こうした協働によって「本を売る場所」から「読書文化を支える場」へと役割を広げることで、地域の未来の読者層を育てる好循環の構築が期待される。
 慣行改革と省力化投資─出版業界に特有の「再販制度」や「委託配本制度」について、マージン比率の見直しや値引き販売(時限再販)の運用を促す。高返品率の改善に適正配本をめざす。POSレジの導入支援により、棚卸の効率化や万引き対策、省人化投資も推進する。
 新規出店と事業承継─日本政策金融公庫の創業融資や信用保証協会の創業保証の活用により、若者世代の書店開業への挑戦を後押し。また後継者への「事業承継・M&A補助金」の適用も拡大する。
 これらの提言を受け、出版各社はどう対応するのか、緊急に討議し具体的な取り組みを明らかにすることが求められている。

◆トーハン、日販とも減収増益
 2024年度トーハンの連結決算は売上高3947億2200万円(前年比1.1%減)、営業利益9億6700万円(同16.8%減)、経常利益15億3200万円(同18.6%減)、当期純利益18億7100万円(同28.9%増)。「取次事業」は15億0500万円の経常赤字。
 日販GHDの売上高3827億4600万円(前年比4.8%減)、営業利益2億9600万円(前年は16億6100万円の損失)、経常利益7億9100万円(前年は11億8000万円の損失)、当期純利益4億1600万円(前年は49億3400万円の損失)。3期ぶりに黒字に転換。取次事業は赤字も利益を大幅に改善。

◆大垣書店と電子書籍ストア協業
 京都の大垣書店は、自ら発行するタウン誌『KYOTOZINE』の電子書籍化を実施。同書店での店頭販売はもとより、大日本印刷などが運営する「honto」でも扱い全国の読者ニーズに応える。
 今後、「honto」と大垣書店は、この協業から得たマーケティング・データを分析し、全国の潜在読者に関心の高いと思われる情報を大垣書店店頭で提案し、関連イベントの開催をおこなう。リアルとデジタル市場を往来できるような試みを行い、紙・電子両方の読者を増やしていくことを目指す。

◆小学館は増収増益に
 24年度決算では総売上高1096億1600万円(前年比0.8%増)、経常利益48億8200万円(同0.3%増)、当期利益36億4200万円(同70.0%増)。「出版売上」は同8.4%減、「広告収入」は同0.6%減と前年実績を下回ったが、「デジタル収入」が同2.2%増、コミックの映像ヒットで「版権収入等」が同26.8%増で好調だった。書籍は児童書が好調だった
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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