2025年06月29日

【オピニオン】戦後80年 改憲派に焦り 国民世論との矛盾 自衛隊明記・緊急事態条項 石破首相主張 維国も=編集部

 戦後80年、日本国憲法施行78年の憲法記念日を迎えた5月3日、東京・有明防災公園に3万8000人を集めた「憲法大集会」に対抗して開かれた改憲派の集会「公開憲法フォーラム」には、石破首相がビデオメッセージを寄せた。厳しさを増す日本の安全保障下「緊急事態対応、自衛隊明記を最優先に取り組んでまいりたい」「衆参の憲法審査会での議論がさらに進み、国会による発議が早期に実現するよう、党として尽力する」とし、今年の自民党の運動方針に条文案の起草を盛り込んだことなどをアピール。自公に加え維新、国民民主の代表も出席した。

憲法審運営にいら立ち

 改憲派の集会公「開憲法フォーラム」の主催は、「民間憲法臨調」「美しい日本の憲法をつくる国民の会」。「危機に立つ日本―各党は改憲の共同作業に着手せよ!」のスローガンの下、会場の東京・平河町の砂防会館に800人、オンライン視聴約2万人が参加した。
 登壇した自民党の古屋圭司改憲実現本部長、濱地雅一憲法調査会事務局長や日本維新の会の青柳仁士政調会長、国民民主党の川合孝典憲法審査会らには、「憲法改正を求める声明文」を国民の会が提出した。
 西修・駒沢大名誉教授、百地章・日大名誉教授らに加え有元隆志特別記者の司会で始まったフォーラムでは国民民主の川合憲法調査会長が全体として「起草委員会を作り、条文を提起して多数決で決める」ことを提起したが、「審査会の議論は言いっぱなしで、徒労感が強い」と審査会の審議にいら立つ「タカ派」の焦りを感じさせる発言もあった。


 憲法審査会の審議は発足当時の中山太郎会長(自民党・元外相)が提起した@政局とは一定の距離を保つ、 A野党第1党の幹事を会長代理とし、会長とともに運営に責任を持つ、B少数会派の発言権を保障する―などを内容とする紳士協定(いわゆる「中山方式」)が運営の建前とされてきた。

 改憲派側にも無理に改憲を「発議」しても、国民投票で否決されては何にもならない、との判断もあり、ある程度これが守られてきた。
 ところが、審査会で議論が始まると、自民党内での意見がまとまっていない状況が浮き彫りになっている。特に昨年の総選挙後、枝野幸男氏が会長になって以降それが目立っている。

進む日米軍事一体化

 石破首相は「わが国を取り巻く安瀬保障環境はかつてないほど厳しい」「自民党は、自衛隊明記、緊急事態対応、参院選の合区解消、教育の充実を掲げている。特に、緊急事態対応、自衛隊明記を最優先に取り組んでいきたい」と表明。「戦争を体験した世代が元気なうちに、国民に問うていかなければならない」と訴えたが、問題なのは、着々と進む日米軍事一体化と、自治体を巻き込んだ戦争準備態勢の形成だ。

 安倍内閣がスタートさせた集団的自衛権容認、安保法制を受けて、後継の菅―岸田両政権は安倍政治の「日米同盟強化・軍事一体化」をさらに推し進めた。「敵基地攻撃」論展開は、安保3文書改定以後ますます強化され、いまや日本は戦争前夜へのまっしぐらだ。

対米自立の意識鮮明

 こうした中、注目されるのは世論が示す方向だ。
 朝日新聞の戦後80年調査は、対米外交について、「なるべく自立した方がいい」は68%「なるべく従った方がいい」は24%だった。同時に「いざというとき米国は本気で日本を守ってくれるか」の問いには、「本気で守ってくれる」の15%に対し、「そうは思わない」は77%だった。
 さらに「世界の平和維持で国際社会が米国にどの程度頼ることが出来るか」の質問には、「大いに」が3%、「ある程度」が40%だったのに対し、「あまり頼ることが出来ない」48%、「全く」が6%だった。(同紙4月27日)
 そして、憲法記念日の各紙世論調査では、「朝日」の「憲法を変える機運が高まっていると思うか」には、「大いに」3%、「ある程度」28%、「あまり高まっていない」56%、「全くない」9%だ。
 9条について「変える方がよい」35%、「変えない方がよい」56%だ。
毎日の「石破首相在任中の改憲について」では、「賛成」21%、「反対」39%。読売の「9条2項の改正は必要か」でも「ある」47%、「ない」49%―だった。
 一方で抽象的な「いまの憲法を変える必要があるか」との問いだと、「ある」53%、「ない」35%だ(朝日)。国民の憲法意識はまだ曖昧で、不確実性だと言えよう。
     JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年5月25日号  
posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | オピニオン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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