Misty F itm
災害の復興とは何をすべきなのか、登場人物の苦悩を通して問いかけてくる。
人吉球磨地域は司馬遼太郎によって「日本でもっとも豊かな隠れ里」と称されたそうだ。川の恵みが豊かな文化を育んだこの地域だが、5年前の熊本豪雨による球磨川の氾濫は、かつてない甚大な被害をもたらしたのだ。
映画は「今もなお水害の爪痕に苦しむ人吉球磨地域を舞台に、復興への道程を必死に歩み続ける人々の生き様を描く」(作品解説から)。「家族同士、夫婦、親子でも意見が異なり、互いにぶつかり合う」姿に、「彼らは改めて球磨川という河とどう向き合いながら生きていくべきかを、自らに問うことになる」。
あれっ、ここで描かれた「川との向き合い方」って、東日本大震災で津波に襲われた地域の復興で防潮堤がつくられた時に問われたことと同じだなぁと気付いた。住む家から海が見えなくなった防潮堤による復興生活、同じ思いでいる東北の人たちの「海との向き合い方」との共通点。人吉球磨が舞台のこの映画を観て、どんな感想を寄せてくれるだろうか。映画を観ながらそんなことをイメージし、東北地方で上映活動を広げてみたくなった。
そう、物語はとってもローカルなのだが、問いかけているのは全国どの地域の復興でも同じ課題、地域に根差した生活の復興を「河の囁(ささや)き」から感じたい。
ローカルを強調している展開が、NHKの地域局が制作する「地域発ドラマ」的だなと感じた。地域の人たちの思いから制作した「人吉球磨発地域ドラマ」という制作側の感性に親しみを覚える。大木一史監督、108分。7月11日から全国順次公開。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年6月25日号
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