2025年07月07日
【原発・エネルギー編】前回総選挙の各党マニュフェストと今回のそれを比較検証した=FoE Japan
国際環境NGO「FoE Japan」は、前回の国政選挙24年衆院選の各党マニュフェスト原発・エネルギー編と今回参院選マニュフェストを比較検証した。自民は衆院選マニュフェストとほぼ変わりがない。公明は、「原発依存度を低減」「将来的に原子力発電に依存しない社会をめざす」という前回マニフェストの記載を削除し、「次世代革新炉の開発・設置に取り組む」を追加。自民のストッパーとしての役割は、もはや期待できなくなった。立憲民主は、前回よりもさらに原発ゼロ色を薄めたものの、「2050年までのできるだけ早い時期に原発ゼロ」「新増設は行わない」は維持している。原発推進派の維新は廃炉とロードマップの見直しをうたい自民より前のめり。「電力・ガス取引監視等委員会を公取委と同じ三条委員会に格上げ」は注目すべき点だ。都議選で勢いづいた参政は、「パリ協定からの離脱」「脱・脱炭素政策」「再エネを止める」としている。原発に関しては「次世代型小型原発や核融合など新たな原子力活用技術の研究開発を推進」と述べている。各党の主な内容は以下の通り。
自民党
今回の参院選ではかなり簡略なマニフェストしか公開されていません。
原発に関しては「安全性を大前提に原発再稼働など電力供給力対策を講じ、国民生活を守ります」とあるだけで、詳細は昨年の衆議院選挙で発表された「政権マニフェスト」を継続しているものと解釈しました。政府方針と同じです。
• 徹底した省エネ・再エネの最大限の導入、原子力の活用
• 原子力規制委員会により厳しい安全性基準への適合が認められた原子力発電所については、再稼働を進めていく
• 核燃料サイクル推進、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定を着実に進める
• 次世代革新炉の開発・建設に取り組む
• 火力については、次世代化、高効率化、水素・アンモニアの混焼やCCUS、カーボンリサイクル等による脱炭素化に向けた取組みを加速度的に推進
参照:今回マニフェスト…重点政策 | 自由民主党 前回マニフェスト…自民党 令和6年 政権公約
立憲民主党
目標とする年限は明記せず、「2050年までのできる限り早い時期に化石燃料にも原子力発電にも依存しないカーボンニュートラル達成を目指す」としています。昨年のマニフェストに盛り込まれていた「全ての原子力発電所の速やかな停止と廃炉決定を目指す」「核燃料サイクルの中止に向けた枠組み構築」「原発に頼らない地域経済の確立やそのための支援」などは見当たらず、さらに脱原発色を薄めた感じです。
ポイントは以下の通りです。
• 今後10年で省エネ・再エネに200兆円(公的資金50兆円)を投入し、年間250万人の雇用創出、年間50兆円の経済効果を実現
• 再生可能エネルギーを最大限活用することで、年間20兆円を超える資源輸入のための国富流出を止める
• 熱利用の拡大、排熱利用、電熱併給のコジェネレーションの導入、断熱の徹底など
• 原子力発電所の新増設は認めない
• 実効性のある避難計画の策定、地元合意がないままの原子力発電所の再稼働は認めない
昨年は「「子ども・被災者支援法」の下、福島県外避難者に対して、その生活実態を踏まえ、支援を継続・拡充」とかなり具体的に書かれていた原発事故被災者支援も、「東日本大震災・原発事故の被災地の復興と被災者の生活再建支援」と丸められてしまいました。
参照:立憲民主党2025年政策パンフレット
日本維新の会
総じて、原発に関しては前のめりの内容です。廃炉やロードマップの見直し、電力・ガス取引監視等委員会を公取委と同じ三条委員会に格上げなど、興味深い記述も見受けられます。
前回のマニフェストでは「民間の責任を有限化する」という文言が入っており、原子力事業者にとっては、都合のいい話だなと思いましたが、今回は削除されている。
ポイントは以下の通りです。
• 原子力規制委員会の審査の効率性
• 原発の早期再稼働
• 既存原発の運転期間の延長や次世代革新炉への建て替え
• 国・地方自治体・事業者の責任を法的に明確化
• 高レベル放射性廃棄物の最終処分場確定を着実に進めるための期限を明示した工程表を作成
• 原子力人材の確保
• 次世代型原子炉の実用化に向けた研究開発
• 除染廃棄物を30年以内に福島県外に撤去する目標を見直し、実行可能なロードマップを策定
• 福島県民への甲状腺検査は希望者のみとし、過剰診断と風評による負の影響を無くす
• 電力・ガス取引監視等委員会を公取委と同じ三条委員会に格上げ
参照:日本維新の会2025 参院選マニフェスト
公明党
昨年のマニフェストでは原発の新増設については書いていないことが自民との違いでしたが、今回は、「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組む」と明記しました。
また、昨年のマニフェストにあった「可能な限り原発依存度を低減しつつ、将来的に原子力発電に依存しない社会をめざします」は削除されました。
自民との違いはなくなり、ストッパーとしての役割は期待できなくなりました。
その他、総じて、政府の方針と同じ内容です。
参照:公明党2025政策集
国民民主党
原発推進姿勢が鮮明です。「原子力施設への武力攻撃を想定し、自衛隊による原子力施設の迅速な保護」などとしているのが特徴です。
ポイントは以下の通りです。
• 安全基準を満たした原子力発電所の早期再稼働
• 運転期間は運転開始から原則40年としつつ、科学的・技術的根拠に基づく厳格な運転期間を適用
• 次世代軽水炉や小型モジュール炉(SMR)、高速炉、高温ガス炉、核融合炉、浮体式原子力発電等次世代革新炉の開発・建設(リプレース・新増設を含む)の推進
• 放射性廃棄物の処理や使用済燃料の再処理の推進
• 原子力施設への武力攻撃を想定し、自衛隊による迅速な保護を可能に
参照:政策各論 2.自分の国は「自分で守る」 | 国民民主党 第27回参議院議員通常選挙 特設サイト
共産党
「すみやかに原発ゼロ、石炭火力からの計画的撤退をすすめ、30年度にゼロに」としています。ポイントは以下の通りです。
• 「原発ゼロ基本法」を制定し、「原発ゼロの日本」を実現する
• 廃炉の「中長期ロードマップ」は現実を踏まえ見直し
• 「処理水」の海洋放出の中止、発生抑制、関係者が納得ができる解決を
• 賠償打ち切りを撤回し、全面賠償と除染をすすめる
• 事故の後始末費用は汚染者負担原則で
• 原発を再稼働させず、新増設も輸出も認めない
• 原発・核燃料サイクルからただちに撤退する
• 原発立地地域も再エネ関連産業で再生をはかる
参照:日本共産党2025参議院選挙 各分野の政策
れいわ新選組
原発については即時廃止するという従来の方針を変えていません。
ポイントは以下の通りです。
• 原発の即時廃止、国が事業者から買い上げ、慎重に廃炉を進める
• エネルギーの自給率を高めることで安全保障を強化する
• 「脱原発!グリーンニューディール」で250万人の雇用を創出
• 高効率ガス発電を当面の主力エネルギー源としながら、再エネの普及で2030年に温室効果ガスを70%以上削減
• 地域の自然と暮らしと調和した分散型の再エネの普及
• 原発事故被害者に徹底した賠償、医療費、保険料の減免措置の継続と拡大
• 福島第一原発の汚染水の海洋投棄を中止
参照:れいわ新選組 参院選2025マニフェスト
参政党
「脱・脱炭素政策で、電気料金高騰・環境破壊・資本流出を助長する再エネ推進を止める」としています。また、パリ協定離脱ともしています。
原発については、前回マニフェストに書かれていた「既存原発の活用」はなくなっています。
「次世代型小型原発や核融合など新たな原子力活用技術の研究開発を推進」としています。
参照:参政党 政策カタログ一覧
社民党
従来の脱原発、自然エネルギー100%の方針を踏襲しています。
• 福島第一原発事故の教訓を風化させず、脱原発を進める
• 被災者、避難者への生活保障と被ばく管理
• 処理汚染水の海洋放出を中止する
• 「グリーンリカバリー」 (環境と両立する産業を育成し雇用を創出する)を推進
参照:社民党25年参院選選挙公約
日本保守党
「日本の優れた省エネ技術の活用。過度な再エネ依存の見直し」とし、再エネ賦課金の廃止、わが国の持つ優れた火力発電技術の有効活用などとしています。
参照:日本保守党の重点政策項目
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