2025年07月15日

【オピニオン】天皇広島訪問 児童動員「お出迎え」「提灯奉迎」県、市、教委後援 裏には日本会議=沢田 正(広島支部) 

 戦後80年に合わせた19〜20日の天皇、皇后の即位後初の広島訪問では、市内の小学校2校の児童約100人が社会科授業として「お出迎え」に動員されたほか、夜の行事「提灯(ちょうちん)奉迎」への参加呼びかけチラシが、市内全小学校の5、6年生と市立高生全員に配布された。

 主催団体の名誉会長は知事。戦前回帰を思わせる動きに、教育・市民団体、被爆者団体、労組などが、「児童・保護者の思想・良心の自由を侵害する」。「奉迎行事が天皇・皇后の政治利用に道を開くと危惧される」として「学校行事として児童を参加させないこと」などを県や市、各教委に要請したが、県、市は聞き入れなかった。

事前確認すら怠り
児童名簿提出要請
 天皇・皇后が19日午後、平和記念公園の原爆慰霊碑に献花するにあたり、市秘書課は5月9日、公園近隣の本川小と中島小の校長あてに「天皇皇后両陛下のお出迎えについて(お願い)」と題した書面を送付。「平和記念公園での両陛下のお出迎えを行うに当たり、次世代を担う若い世代にその役割をお願いしたい」として、小学6年の児童が社会科の授業の一環として「お出迎え」するよう求めた。さらに警備目的で宮内庁に名簿提出が必要と判断した県の指示を受け、市は両校に児童の名簿の提出も要請した。
 両校は保護者に「お出迎え」について連絡。本川小は追加して名簿提出に同意するか否かを確認する文書を保護者あてに配布した。一方、中島小は同意を得ないまま名簿を作成し、市秘書課に提出した。保護者から個人情報の提供を疑問視する指摘があり、県が宮内庁に確認して名簿は不要と判明、市は名簿提出要請を撤回、本川小は保護者におわびの文書を出し、既に市に提出されていた中島小児童の名簿は破棄された。

「お出迎え」要請文
市・教委は撤回拒否
 「お出迎え」をめぐり、市民団体「教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま」は13日、「校外学習として児童を参加させようとすることは、『歓迎ができない』という強い思いのある児童・保護者に保障されている憲法の『思想・良心の自由』と『表現の自由』の侵害になる。歓迎する、しないは個人の判断によるべきで、行政、公教育が介入したり強制したりすべきではない」として「@学校行事として天皇の来広行事に児童を参加させないことA市が小学校に出したお出迎え要請文書の撤回」を求める要請書を市と市教委に提出した。要請書には120団体の賛同と2787筆の署名が1週間で寄せられた。
 要請書受け取りに際しての質疑で、市秘書課と市教委は「天皇のお仕事を学ぶ貴重な機会であり、社会科の学習に位置づけられる。参加を希望しない場合は学校で教員の指導の下、個別に学習する配慮をする」と説明。「自分の子どもが一人ぼっちで学校に残って勉強している姿を想像すると親としてそんなことはさせられない。そこまでしてやらなければいけないのか」との問いに答えに窮する場面もあったが、要請には応じなかった。

 19日夜、天皇夫妻が宿泊するホテルから見下ろせる「ひろしまゲートパーク」で行われた歓迎の「提灯奉迎」行事の主催は「天皇陛下奉迎広島県委員会」で、名誉会長に湯崎英彦知事。広島県、県教委、広島市、市教委が後援に名を連ねた。
だが、委員会の連絡先は日本会議広島事務局の住所と電話番号。副会長には「日本会議広島」の会長が就任していた。
 広島県原爆被害者団体協議会(佐久間邦彦理事長)など13団体は広島県に対して「憲法改正を主張する日本会議が主導する奉迎行事が天皇・皇后の政治利用に道を開くのではと少なくない県民が危惧している」として知事の名誉会長就任の取り消しや、参加は個々の自由意思によることをチラシの配布学校で徹底することなどを求めたが、県は応じなかったという。

『はだしのゲン』は
「大人の欺瞞」批判
 2023年に広島市の平和教材から削除されたマンガ『はだしのゲン』には、新憲法公布後の1947年12月の昭和天皇の広島訪問で、小学校の先生が「あすは天皇陛下さまがこの広島に来てくださる。みんな日の丸の旗をふってご歓迎するため旗を作ってくることを忘れるな」と言い渡したのに対し、ゲンが「天皇は戦争をおこし、日本中の街やこの広島や長崎をピカで焼け野原にし、わしのとうちゃんや数え切れない人を殺し今も苦しめている戦争の責任者じゃないか。日本人は戦争の反省がたりんのう。先生をみそこなったわい。わしゃ旗なんか作って歓迎せんぞ」と反発する場面がある。

 今回、「お出迎え」に動員の本川小はゲンの作者中沢啓治さんの母校であり、マンガの場面は中沢さんの体験だ。
新憲法下でも戦前の天皇絶対観を生徒におしつける大人の欺瞞を鋭く批判したゲンの言葉を、日本が戦争する国へ進もうとしている今、かみしめなければいけないと思うのは筆者だけだろうか。
        JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年6月25日号
    
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | オピニオン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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