2025年07月17日

【放送フォーラム】「死の行進」制作体験聴く=小滝一志(放送を語る会)

 「放送フォーラム」(JCJも協賛)が5月24日、「戦後80年の節目に戦争をどのように伝えていくか」をテーマに開かれた。昨年度JCJ賞を受賞したSBC信越放送「78年目の和解―サンダカン死の行進・遺族の軌跡」を制作した湯本和寛記者を迎え、その制作体験を聴いた。

 番組は、太平洋戦争末期、ボルネオ島北部で起きた「サンダカン死の行進」の犠牲者遺族が和解を模索し、日本軍兵士、英・豪軍捕虜、現地ボルネオの人々や華僑らが、立場の違いを超えてともに慰霊祭を営むまでを描いた50分のドキュメンタリーだ。

 番組制作は、ボルネオでマラリア死した湯本記者の大伯父(祖父の兄)戦友が、戦後50年経た1995年、大おじの戦友が訪ねてきて「サンダカン死の行進」を知ったことがきっかけだった。

 湯本記者は、その後の取材で「死の行進」に引き回された英・豪軍捕虜2400人中、たった6人の生き残りの一人の子息ディックさんが「真実を追い求め」て多方面を調査。500ページに及ぶ記録をまとめ、その末尾で遺言として「和解」を求めていたことを知る。
 ディックさんは2016年亡くなったが、その思いは周囲の人々に引き継がれて身を結び、2023年に「和解の慰霊祭」開催が実現した。

 番組の結びはこの慰霊祭。参加者のラストコメントが印象に残る。「一人一人の人間が、戦争という狂気によって自分が人間であることを忘れてしまう。私は自分自身が人間であることを確認したかった。そして相手も人間であることを」。

 湯本記者も講演をこう締めくくった。「戦後80年を経たが、戦争の影響はまだまだある。その事実を、今につながる問題として伝えていくことがジャーナリストに求められている。和解の取り組みが、今の社会の分断を乗り越えるきっかけになればと思う」
      JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年6月25日号
 
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 放送 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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