2025年07月22日

【出版トピックス】7月─猛暑を吹き飛ばす出版界の大ヒット・好企画=出版部会

◆『8番出口』初版10万部で発売・即重版
 水鈴社は7月9日、川村元気『8番出口』(文庫サイズ・本体888円)を初版10万部で発売。強い反響を受け、同日には早くも2刷1万5000部の発売日重版を決めた。
 同書は、8月29日公開の映画「8番出口」(配給=東宝)の監督と脚本を務めた川村氏が、自ら書き下ろした小説版。原作の無限ループゲームは2023年にリリースされ、全世界で社会現象になるほどの人気を集め、累計180万のダウンロードを記録している。
 発行元の水鈴社(東京都渋谷区)は、設立2020年7月7日、主な刊行本は、瀬尾まいこ『夜明けのすべて』『ありか』、YOASOBIと直木賞作家のコラボ小説『はじめての』、夏川草介『スピノザの診察室』など。

◆「夏の100分de名著フェア」受注額過去最高
 毎年恒例の同フェアに968書店から申込みがあり、その受注金額が過去最高の約1億658万円となった。「100分de名著ブックシリーズセット」(書籍)は30点と10点、「別冊100分de名著シリーズセット」(ムック)は20点と10点と計4種のセットがある。いずれも各5冊。書店には7月中旬以降に着荷するという。参加書店にはパネル、しおり、POPの拡材を、1500円以上の購入した読者には抽選で図書カードを進呈する。
 このシリーズはNHKで放映し、人気を博している。めったに手にして読まない難解な書物を取り上げ、懇切丁寧な解説を施し、読んでみたくなるか、理解が進む内容が好評だ。
 例えばサン=テグジュペリ『人間の大地』を講師・野崎歓氏が解説(8月放映)。このテキストは7月26日発売。フッサール『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』は、講師・西 研氏が解説(7月放映)。このテキストは6月25日に発売されている。放映の約1か月前に書籍が刊行される。

◆『ババヤガの夜』文庫版21万部を重版
 英国版の同書が翻訳部門で受賞したことを受け、河出書房新社は、書店からの問合せが殺到したため、文庫版21万部、単行本4000部の重版を決めた。重版分は7月10日以降順次、書店へ出荷する。国内の同書の累計発行部数は電子版を含め、26万部を超える。
 英国ではFaber & Faber社が版権を取得。サム・ベット氏による翻訳で昨年9月に刊行した。「ダガー賞」の日本人受賞は史上初めて。受賞作は文芸誌「文藝」2020年秋季号で全文発表し、同年10月に河出書房新社で単行本化、2023年5月に同社で文庫化された。

◆永井豪氏ら日本漫画協会が石川県に寄付
 石川県輪島市出身の漫画家・永井豪さんらが7月11日、石川県庁を訪れ、チャリティーオークションの収益金、1億2300万円余りを石川県に寄付した。「マジンガーZ」で知られる永井豪さん、「はじめの一歩」で知られる漫画家の森川ジョージさんらの呼びかけで、能登半島地震の被災者を支援しようと、4月から205人の漫画家が描き下ろした278枚の色紙をオークションに出品。
 色紙には被災地へのメッセージがつづられているものや、能登の景色が描かれたものもあった。最も高い落札額は諫山創さんの色紙620万円。他にも30枚以上の色紙が100万円以上で落札されたという。

◆秀和システムの出版事業 他社が承継
 破産手続きに入った秀和システムの出版事業は、出版社トゥーヴァージンズが承継し、株式会社秀和システム新社として再出発することに決まった。トゥーヴァージンズ(東京都千代田区九段)は、2015年4月創業、資本金2000万円、パソコン関係の本は出していない。
 その上で、承継して発足の秀和システム新社は、負債・未払金(従業員の給与、著者への原稿料や印税、編集費やデザイン料、印刷製本、倉庫、運搬費など)は、承継しないという。
 こうした内容で、秀和システム新社が出版事業を継続できるのか、さらに取次との「委託販売」契約がどうなるのか、数多くの疑問が残る。委託販売といっても基本は「返品条件付き売買契約」である以上、所有権は取次や書店に移転しているのではないか。取次や書店にある出版物は債権回収の対象になるのか、「返品条件付き」をどう解釈するかで動きが変わるだろう。

◆雑誌オンライン書店、サイバー攻撃で混乱
 富士山マガジンサービス(東京都渋谷区)は、雑誌のオンライン書店「Fujisan.co.jp」を運営し、雑誌の定期購読に特化。2002年に設立、資本金2億6千万、売上高36億円。
 6月中旬にサイバー攻撃に会い、システム障害に陥った。最大で顧客250万人超の住所情報が閲覧された可能性がある。7月4日にサイトを公開停止にし、同8日に再開したものの、カスタマーサポートへの問合わせが殺到し、「状況がひっ迫している」という。7月11日、まずはメールでの対応に集中するため、電話対応を一時的に停止する可能性があると発信した。取引する出版関係者の不安感が高まっている。
 ただし不正アクセスの遮断システムを修正する措置を実施した。漏洩した可能性のある個人情報には、クレジットカードや銀行口座等の決済に関する情報は含まれていないという。
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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