フジテレビが一連の問題を自己検証した番組が、7月6日に放送された。当初は第三者委員会の調査報告書が公表された直後にも放送されるのでは、との見通しもあったが、投資ファンドによる株主提案などの騒動が巻き起こる中で会社の体制固めが優先されたせいか、結局は株主総会終了後の7月にずれこんだものとみられる。日曜日の午前中、レギュラー番組を休止して、105分間CMなしの特番だった。
印象として、第三者委員会の報告を忠実にたどって、関係者への取材で証言を集めて、有識者のコメントをはさみながら構成したもので、大きな新事実の発掘もなく、物足りなさを覚えた視聴者も多かったに違いない。とくに、番組冒頭に清水賢治社長が出てきてお詫びの言葉から番組が始まったあたりは、『放送レポート』でのインタビューで報道局編集長が「そういう番組にはしたくない」と言っていた番組になってしまった感が拭えない。
自己検証番組の例として忘れられないのは、かつてテレビ朝日『ザ・スクープ』で「やらせ」の疑いが浮上した際に、それを検証した番組だ。
その「やらせ」疑惑とは、1993年に放送された、中国で死刑囚から臓器移植手術が行われているというテーマで、全編隠し撮り映像によるものだった。「やらせ」の内容は、時間を前後させて意図的に編集したことや、証言者がインタビューに応じなかったために通訳に刑務官の服を着せて覆面インタビューを撮影したことなどだった。94年に中国政府からテレビ朝日に対して内々に猛抗議があり、それをかぎつけた週刊誌が報じて一大スキャンダルになるという段階で、同番組のスタッフが自己検証番組の制作を訴え出た。
番組スタッフが考えた検証スタイルは、外部の第三者に関係者を取材してもらう、という手法だった。第三者として指名されたのは、元TBS報道局長で制作会社社長を務めていた吉永春子さん(故人)だった。『魔の731部隊』など優れたドキュメンタリー制作者として知られる吉永さんは、番組に企画を持ち込んで取材・制作した制作会社のスタッフや、テレビ朝日のプロデューサーなど関係者に徹底インタビュー。最後に吉永さんが番組のインタビューに答えるという形で、事実上の第三者的な検証を試みたのだ。結果、『ザ・スクープ』は番組打ち切りを免れて続行した。
外部の視点を入れる検証の重要性は、今日も変わらないのではないか。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年7月25日号
2025年08月07日
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