JCJも協賛する「NHKと放送のこれから」の連続公開講座(第3回)「TBS『報道特集』で何が起きているのか」が7月20日立教大学で開かれ、番組の゙琴袖(チョウ・クンス)前編集長が講演した。
゙氏は講座の冒頭「今、SNSというネットメディアが政治をどう変えようとしているか。もっと言えば、民主主義をどう破壊しようとしているのかを知って帰ってほしい」と参加者によびかけた。
「報道特集」は昨年11月の兵庫県知事選について「公益通報制度」との関わりで取材を進め「当選した斎藤知事側と、自らの当選は目指さないもう一人の立候補者との間に、選挙運動の協力があったのではないかという調査報道を2回に分けて放送した」(゙氏)。
「報道特集」は昨年11月30日の放送で、NHK党の立花孝志氏の関与を伝えているが、今年1月、立花氏のデマ情報の標的になった兵庫県議の自殺が「12回にわたるキャンペーンのきっかけになった」(゙氏)。
゙氏は、その問題意識について「これは兵庫だけの問題ではない。民主主義の根幹に関わる問題と考えたからだ」と語る。
兵庫県知事選では、立花氏自身が発信した動画だけで、再生回数は1500万回に急増、斎藤知事の公式チャンネルの12倍に達していた。
取材が進み、放送回数を重ねるに連れ、番組ど氏に対する攻撃が増えた。「殺害予告のメールが届いた時は、警察に被害届を出した」。
ネット上で各種のサービスを仲介する「クラウドワークス」という企業がある。立花氏の街頭演説を撮影する仕事も仲介する。
番組は、立花演説を撮影したワーカーのA氏を取材した。A氏は選挙期間中のユーチューブの使用権を与えられ、立花氏の演説動画を配信し続けたという。
動画には、自殺に追い込まれた竹内県議に関するデマを流布する場面も付記されている。
都内に一人で暮らす大学生。番組の取材に「クラウドワークスはお金を稼ぐための手段」と言い切り「送られてきた動画を1分程度の切り抜き動画に編集して納品した」と答える。「今のメディアを良く思っていないので、メディア批判を強調する動画を返した」「SNSには同じようなコンテンツが無数にある。真実(かどうか)と言うより、コンテンツをたくさん見ると、真実に思えるようになる」とも。
゙氏は、メディアに広がる「中立信仰」蔓延の問題にも言及した。放送法4条に「政治的公平」の規定はあるが、「中立」はない。゙氏は「戦時中に放送が戦争礼賛報道を行ったことへの反省から、今の放送は出発した。放送は権力の監視、チェックの役割を忘れてはならない」と強調した。
゙氏はさらに「マスメディアは第4の権力と言われるが、それはメディアが弱者の立場を正しく伝えることを委譲されているからだ」が、「弱者側に立つ報道は弱体化されており、今後激減する」と警告。今後の対応については「同じ危機感を持つ人たちと連帯し、発信していく以外に方法は無い。そのために、私は今日ここに来て発信しています」と述べた。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年8月25日号
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