2025年10月06日

【出版界の動き】ガンバレ! 出版振興に向けての地道な取り組み

◆8月期・紙の出版物630億円(前年比5.0%減)
 その内訳は、書籍365億7400万円(同0.1%減)、雑誌264億7900万円(同10.9%減)。雑誌では月刊誌が同8.4%減、週刊誌が同23.8%減。返品率は書籍が36.6%(同1.2%減)、雑誌は46.3%(同0.3%増)。
 書店店頭での売れ行きは、書籍が5%増で、文芸6%増、文庫本8%増、ビジネス書11%増、学参5%増、児童書4%増、新書本4%増と、主要ジャンルすべてで前年を上回った。雑誌は定期誌が3%減、雑誌扱いコミックスが8%減、ムックは15%増。
 なお、出版科学研究所による上記の販売金額は取次ルートのみで、近年増加している出版社と書店の直接取引や出版社による直接販売は含まれていない。電子出版市場は1月と7月の年2回発表される。

◆書店なし上郡町とトーハンが協定
 書店がない自治体の解消を目指すトーハンと兵庫県上郡町が、書店の創業支援や地域の活性化にむけ、ともに取り組む「地域連携協力に関する協定」を結んだ。トーハンによると県内では初めて、全国では7例目になるという。
 上郡町内では2018年に店舗を構える書店が姿を消し、「無書店自治体」になった。図書館はあるが、町民からは「本を買う機会がほしい」という声が根強い。上郡町とは昨年春から話し合いを始め、トーハンが町主催の催しに移動販売車を派遣するなど、関係を築き上げてきた。協定では、教育、地域の活性化、産業振興、書店の創業など7項目で協力する。

◆“本のまち”八戸「ブックフェス」盛況
 「本のまち」を掲げる青森県八戸市で、本に親しむ毎年恒例のイベント「ブックフェス」が
9月最終日の土日に実施された。全国でも珍しい公営の書店、八戸ブックセンターが毎年開いている。市の中心部にあるブックセンターと近くの市の施設などに、市内外の書店が古本を販売するコーナーや、全国の小規模な出版社がおすすめの本を展示・販売するコーナーが設けられた。訪れた人たちは、本を次々に手に取って買い求めた。

◆神保町は<世界で最もクールな街>
 世界各地の活気に満ちた魅力的な街を選出する、タイムアウトの「世界で最もクールな街」ランキングが発表された。2025年版では、東京の神保町が堂々の第1位に輝いた。
 この調査は、タイムアウトの現地ライターや編集者による広範なネットワークを通じて得られた地域の知見と内側からの専門的視点に基づき、世界各都市の街を評価したもの。基準となったのは、文化・コミュニティー・住みやすさ・ナイトライフ・飲食店・街のにぎわい、そして「今らしさ」といった要素である。その結果、神保町は「世界で最もクールな街」という枠を超え、「世界で最も活気にあふれた街」として頭角を現した。
 東京の知識人たちに何世代にもわたり愛されてきた神保町は、歴史ある大学街であり、書店好きにとっての楽園だ。東京のビジネス街からほど近い距離にありながら、独特の雰囲気を保っている。最大の魅力は約130軒に及ぶ古書店で、「小宮山書店」や「北沢書店」といった老舗もその中に含まれる。これらの店の多くは、昔ながらの喫茶店やカレー店と同じ建物に入った、やや古めかしい低層の雑居ビルに軒を連ねている。

◆「次にくるマンガ大賞 2025」1位は‥‥
 「次にくるマンガ大賞」は、これからのブレイクが予想される作品を発掘し紹介するという趣旨で2014年に創設された賞。一般ユーザーからの投票で大賞が決定する。このほど結果が発表された。コミックス部門の1位は、西修原作による宇佐崎しろ「魔男のイチ」、Webマンガ部門の1位は住吉九「サンキューピッチ」が受賞。
 「魔男のイチ」は、山暮らしをしている狩人の少年・イチを主人公に描く“魔法ハンティングファンタジー”。週刊少年ジャンプ(集英社)で連載中。「サンキューピッチ」は、少年ジャンプ+で連載中だが、「ハイパーインフレーション」の住吉が描く野球譚。1日3球しか全力投球できない天才投手と、野球部員たちの物語だ。

◆ナンバーナイン、漫画出版に参入
 9年ほど前に創業したナンバーナインは、すべての漫画を電子コミック配信するデジタル配信サービスを業務としてきたが、「漫画で待ち遠しい未来をつくる。」をモットーに掲げ、自社で発掘・育成するオリジナル作品の価値を最大化するため、紙書籍出版事業へ新規参入する。新レーベル「No.9 Comics」「Blend Comics」を創刊し、第一弾5作品を10月28日に発売する。
 今回の紙書籍出版事業への参入は、デジタルでヒットした作品や有望なクリエイターの活躍の場をリアル書店へと広げ、デジタルとリアルの両軸で作品を盛り上げていくことを目的としている。

◆「陰謀論的思考の傾向」に差出る
 スマートニュース社の社内シンクタンク・スマートニュース メディア研究所は、日本国内の政治的・社会的分断や、人々のメデイア接触状況を概観する「スマートニュース・メディア価値観全国調査」(郵送方式)の結果を公表した。
 主なニュース情報源に、ユーチューブなどの動画系SNSを多く利用している人ほど、陰謀論的な思考をする傾向があり、新聞を多く利用している人は逆の傾向があるという。調査では陰謀論的思考の強さを測るため、5項目の内容について、どの程度正しいと思うかをそれぞれ5段階で尋ねた。
 「思う」と答えた割合が、最も高かった項目は「一般の人には決して知らされない、とても重大なことが世界で数多く起きている」の87%、最も低かったのは「政府当局が、すべての市民を厳重に監視している」の22%だった。
 ここには主なニュースの情報源として、ユーチューブ、インスタグラム、TikTokを週4日以上見ると答えた人、すなわち動画系SNSでニュースを視聴する頻度が高い人ほど、陰謀論的思考が強い傾向がみられた。一方、主に新聞を週4日以上見ると答えた人では、陰謀論的思考が薄かった。
 陰謀論的思考は、社会的孤立や生活上の不満と結びついている可能性があり、特定の層に限られた現象ではない。特に動画プラットフォームでは、視聴履歴に基づいて感情的・扇情的なコンテンツがアルゴリズムによって優先的に表示されやすく、それが陰謀論的な認識を強化する構造になっている可能性がある。
posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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