2025年10月12日
【焦点】49年までに米に代わり覇権国 台湾侵攻、共産党体制に動揺 米ロに次ぐ核大国 鈴木隆講演=橋詰雅博
「習近平氏は建国(中華人民共和国)100周年の2049年までに米国に代わって中国が世界の覇権国になるのを本気で追求しています」「台湾有事が起きる可能性は低いと思います。武力統一に踏み切れば、共産党体制を動揺させると習氏は考えています」――。中国の習近平国家主席を長年研究する大東文化大学東洋研究所教授の鈴木隆氏=写真=は8月23日、JCJオンライン講演に出演。対米関係と台湾問題の2つの重大テーマについてこう指摘した。
集団指導体制、高度経済成長、人口増加、この3つが終焉した中国の14億人リーダー、習近平国家主席を@秩序や規律を重んじる保守主義者、A実戦経験のない軍人政治家、B25年間の地方指導者としてのキャリアの持ち主と鈴木氏は分析した。3つの顔≠ェある習主席の政治信条は、「父親が元副首相だったゆえ血統・門閥に対する強い自負、先輩指導者から受け継いだ責任の遂行、中国の歴史、文化、伝統の重視」と鈴木氏はいう。
民主化運動を抑制
そのうえで政治の基本は@中華民族の偉大な復興、A民主化運動の抑制、B領土拡大と海洋進出の積極化―鈴木氏はこう述べた。
Aは共産党体制の永続には不可欠な要素であり、Bは台湾統一や東シナ海の尖閣諸島(中国名、釣魚島)、南シナ海の領有権を念頭に置いている。これにより@の偉大な復興すなわち「最大の資本主義国家の米国を最大の社会主義国家の中国が21世紀半ば(49年)までに追い抜くことが実現できる」と鈴木氏は語った。
最近、権力の低下、健康不安、失脚といった習主席を巡る諸説が流れているが、鈴木氏は「そんなことない」と否定。習主席は世界最高水準の医療を受けており、健康に問題がないから高地、チベット自治区成立60周年式典に8月21日出席したと鈴木氏は見ている。
さらに習体制の政治と軍事両面を含む情報を@歴史、A構造、B制度、C政策、D組織など7項目に分けて検証した鈴木氏は「権力低下も失脚もない」とした。
独裁体制4期目も
となると習独裁体制はいつまで続くのか。「オーストラリア元首相で駐米大使のケヴィン・ラッド氏は、27年から32年の4期目もトップの座にとどまると最新著書で書いています。私もその可能性は高い」と鈴木氏は述べた。
中国による台湾侵攻について鈴木氏は「台湾が独立宣言しない限り武力発動は考えにくい。28年の総統選挙に向けてSNSを用いた工作や軍事的な圧力を増大させて、中国に親和的な総裁誕生を狙う」と予測した。
日中友好は難しい
中国の核戦力増強に関し「ロシアのウクライナ侵攻でプーチン氏の核の脅しが抑止力として有効に働くという教訓を中国は得ました。核弾頭保有数は30年までに1500発に増えるでしょう。中国は米ロに次ぐ核大国になる」と鈴木氏は説明した。
軍拡の日本、軍備増強の中国、現在は日中の友好関係を築くのは困難としたが、鈴木氏は「来日した中国の若者に権力の威圧・脅威がなく普通に暮らせる社会があることを見てもらう。こうした民主化のタネをまけばポスト習近平時代≠ノ新しい可能性が開けるかもしれません。やらないという選択肢はない」とアドバイスした。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年9月25日号
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