2025年10月24日
【辺野古新基地建設@】地盤改良工事が長期中断 頓挫の可能性も=北上田 毅さん寄稿(沖縄平和市民連絡会)
大浦湾には6月初めまで、作業船がひしめいていたが‥‥
辺野古新基地建設事業は、2014年の着手から、すでに11年が経過した。当初の埋立承認申請では、「工事期間5年」、「施設建設5年」とされていたから、本来なら今頃は、米軍の運用が始まっているはずだった。
ところが、大浦湾海底部にマヨネーズのような軟弱地盤が拡がっていることが判明し、地盤改良工事が必要となった。そのため、防衛局は設計変更を申請。知事は不承認としたが、国土交通大臣が知事に代わって承認(代執行)し、裁判所も沖縄県の訴えを門前払いして、昨年1月から大浦湾での工事が始まった。
この設計変更申請では、「工事期間9年3カ月」で、12年後には米軍の運用開始とされている。18年から始まった辺野古側埋め立て工事はほぼ完了したが、投入された土砂はまだ全体の約16%にすぎない。このペースでは埋立完了までいったい何年を要するのか、その目途も立たない。
また、那覇地裁で争われている辺野古周辺住民の抗告訴訟も、「原告適格」の壁を突破し、今後、司法の場で初めて工事の適法性についての審査が始まることとなった。
工事そのものが頓挫する可能性も出てきているのだ。
「台風避難」の
作業船戻らず
大浦湾では、昨年1月から海上ヤード工(海底に大量の石材を投下し、大型ケーソンの仮置き場となる台座を造成する)や、外周護岸の一部となるA護岸工(太い鋼管杭を前後2列に打設し、その間に中詰材を入れて護岸とする)等の工事が進められている。さらに今年になってからは4万7千本の砂杭を打つ地盤改良工事が始まった。
本年6月初めまでは、大浦湾には巨大な地盤改良作業船6隻が並んでいた。地盤改良作業船は、櫓(リーダー)の高さがタワーマンション並みの70bほどあり、「海に浮く工場」とも言われる。
大浦湾には他にも、海上ヤード工の石材投下船、A護岸工のための鋼管杭打設船、浚渫工、海底への敷き砂投下船、さらに、土砂運搬船、海砂運搬船等がひしめきあっていた。ところが6月上旬、突然、6隻の地盤改良作業船が出ていってしまった。沖縄防衛局は、「気象条件を考慮」と説明したが、当時、はるか南方で熱低発生の情報はあったが、沖縄には近づいていない。その後も、沖縄島に接近する台風はなかったが、地盤改良作業船は3カ月以上が経過した今も、なぜか、奄美大島等に避難を続けている(9月22日現在)。
他の工事の作業船は、7月下旬に大浦湾を出たが、8月上旬には戻り、工事を再開している。ところが、地盤改良作業船だけは戻っていないのだ。
砂杭打設には
約10年が必要
地盤改良の砂杭は、6月上旬に作業が停止してしまったので、現時点でまだ2900本しか打設できていない。このペースでは、全4万7千本の砂杭打設には、約10年を要する。地盤改良を終えてやっと護岸工や埋め立て工に入るのだから、これではいつ事業が完了するのか見当もつかない。
大浦湾には、海面下90bまで軟弱地盤が続いているが、今回は海面下70bまでの地盤改良(サンドコンパクションパイル〔SCP〕工法)しか行わない。沖縄防衛局は「技術的に問題はない」と主張するが、実際は、海面下90bまで施工できる作業船はなく、改造しても70bまでの地盤改良が限界のためである。そのため防衛局は今回、6隻のSCP作業船を国費負担で70b級に改造した。
船の改造では
安定性に問題
改造で櫓(リーダー)の高さは、20bほど高くなった。船体寸法は変わらないので、船の重心が高くなり、安定性に問題が生じているのだ。今回、作業船が長期にわたって戻ってこられないのは、もし、台風に遭遇した場合、致命的な事故につながりかねないためであろう。このままでは台風シーズンが終わる11月過ぎまで、地盤改良工事はできない可能性がある。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2025年9月25日号
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